第4話


・貴女side



『倉持先輩!』

倉「おー、はよ」

『今日はちゃんと朝から学校行くんですね!』

倉「いつも行ってるっつーの、これでも」

『えーほんとですかぁ?』





あれから数週間。
倉持先輩とはよく話すようになった。

次の日からこんな気軽に話しかけることは流石にできなかったけれど、会ったら目を合わせて頭を下げるようになり、次は挨拶を交わせるようになり、アパート内で会ったら少し、話すようになった。

時には陸と倉持先輩が一緒にサッカーをしている所を参加させて貰ったりもした。

そのときの無邪気に笑う倉持先輩を見て、気兼ねなく話してくれる倉持先輩を見て、すっかり"怖い"なんて気持ちは一切無くなっていた。


今ではその後ろ姿を見かけると、なんだか嬉しくなってしまい、自分から話かけに行ってしまう始末。





倉「つーかお前、良いのかよ」

『?何がですか?』

倉「こんな奴と一緒にいると、お前の印象まで悪くなんだろ」

『えー倉持先輩のどこが印象悪くなるんですか?こんな優しいのに』

倉「よく言うぜ、最初ビクビクしてたくせによ」

『えっバレてる…』

倉「ヒャハ!ま、お前が良いならいーけど」





確かに、見た目は金髪だし制服も着崩して明らかにヤンキーそのものだ。
オマケに噂だと思っていた喧嘩っ早い性格も、喧嘩が強いと言うことも事実のようだ。

けれど、一緒にいて分かったことがある。
倉持先輩は根は優しくて、理由が無いのに喧嘩をすることはない。

倉持先輩が手を出すときは決まって、仲間が傷つけられた時だけなんだ。
だからといって人を傷つけて良いと言うわけではないんだけど、それでも、そんな義理人情に生きる倉持先輩はとてつもなくカッコいい。

倉持先輩がいつも一緒にいる、ヤンキー仲間の人が喧嘩で怪我をした時も、倉持先輩は仇を討つかのように一人で全員倒してしまったらしい、怖い、凄い。…カッコいい。


まぁ、先生にはこっぴどく叱られていたけれど。

それでも、それだけ素行が悪いのにも関わらず、先生たちから恐れられても、見放されている訳でもないのは、やっぱり倉持先輩の人柄なんだろうな。


それに、仲良くなってから聞いたら、やっぱりお酒やタバコは一切手を付けていないらしい。
「んなもん野球やってる奴が出すわけねえだろ」って言われちゃった。

お金の強奪のことに関しては、終いには怒られてしまった。
「誰だんな噂流してんのは!?」だって。

それを聞いて、ますます倉持先輩の良さが分かってしまった。





『倉持先輩ってどこの高校行くか決めてるんですか?』

倉「さあな、野球ができたらどこでもいーよ」

『決まったら教えてくださいね!あ、でも男子校はやめてくださいよ!』

倉「あ?なんでだよ」

『だって私が入れないじゃないですかー!』

倉「はぁ!?着いてくんのかよ!?」

『えっ!?ダメなんですか!?』

倉「ダメっつーか…」





ちょくちょく野球をしている倉持先輩を見に行ったことがあるけれど、素人目に見ても倉持先輩がずば抜けて上手いのが分かる。
野球をしている時の倉持先輩は、余計にカッコよく見えて。

私の夢は、高校生になったら野球部のマネージャーになって、一番近くで倉持先輩を支えることなんだ。

今からそんな先の未来を想像して、胸が高鳴った。




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