第2話
・貴女side
「きょうね、ほいくえんでおねえちゃんのかおかいたんだよ!」
『嬉しい!帰ったら見せてね』
「うん!いいよ!」
『今日もお父さん帰ってくるの遅いから、3人で夕飯食べようね』
学校からの帰り道、その足で少し離れた保育園まで、まだ幼い妹を迎えに行き、手を繋いで帰路に着く。
3年前、病気で母を亡くし、父子家庭となった我が家では、3歳の妹、小学生の弟の子育て、家事を私が行っている。
とは言っても、家事はお父さんも一緒にやってくれるし、妹も少しずつ1人で出来ることが増え、小学生なりに生意気な弟も
ある意味妹より手が掛かる部分もあるけど、それなりに自立して家事も協力してくれる。
妹の真知と今日の保育園での出来事を話しながら歩いていると、あっという間に私達が住むアパートが見えてくる。
ここまでくると、ほぼ毎日、弟である陸の声が聞こえてくる。
私たちの住むアパートは弟と同世代の子達もたくさん住んでおり、学校帰りほぼ毎日遊んでいる姿がある。
『陸ー、そろそろ帰るよー!夕飯の手伝……!』
「あ、ねーちゃん」
今日も例外ではなく、サッカーボールを蹴る弟の姿が見え、遠くから声を掛ける。
が、さらに遠くに映るシルエットはどう考えても陸と同じ小学生には見えない。
よく目を凝らして見てみると、そこには制服である学ランを着崩し、中には真っ赤でド派手なTシャツ。
そして髪の毛は金髪の
『倉持、先輩…』
そう、そこには私と同じ学校で、一つ上の、学校内で悪い意味で有名な、倉持先輩の姿があった。
な、なんでそんな人が陸と一緒に…?
カツアゲ、暴行、悪行、様々な悪い憶測が私の頭の中を駆け巡る。
ど、どうしよう…。
『陸、帰るよ…』
手も足も、声も震えながら。
できるだけ倉持先輩が視界に入らないように陸に声を掛ける。
真知のことも、出来るだけ倉持先輩に見えないように、私の体で隠しながらアパートのエントランスへと向かう。
「えー!まだ遊び足りねえよ!」
こっちは一刻でも早くこの場を去りたいと言うのに、当の本人はブーブー不満の声を漏らす。
ほんとに、ボコボコにされても知らないからね!!良いから早くきて!!!
なんて、心の中で叫びながら、エレベーターのボタンを押す。
何となく倉持先輩の視線が刺さってるような気がして、今にも恐怖で崩れそうなほど、私にとって倉持先輩は、本当に怖い存在でしかなかった。
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