第2話
・貴女side
「とりあえずもう今日は授業終わっちまうから寮行ってその荷物置いてこい」
『は−い』
「そしたら諸々の資料渡すから校舎の方来いな。君のクラスはD組で担任は桜木先生だから」
しばらく歩くとなにやら大きな建物。
入口の扉の前には教育寮と書かれた看板が立ててある。
「玄関入って左側に寮の職員室あるからそこで詳しい話聞きな」
ここまで案内してくれた先生に一言お礼を言い寮内へと入る。
言われた通りに寮職員室に挨拶をして資料を受け取り、それを見ながら自室へと向かう。
私が入る酪農科は一年生の内は義務入寮らしい。
何でも家畜舎実習があるからだとかなんだとか。
一通り荷解きを終え息をつく。
先程6限を終えるチャイムが鳴ってしばらく経つというのにルームメイトは誰一人として帰ってこない。
…早く友達作りたいのに。
仕方ない、とベッドから立ち上がり校内MAPを片手に校舎へと向かった。
「すんませーん、通りまーす」
教育寮から校舎へ敷地内とは思えない長い道のりを歩いていると、後ろから声を掛けられる。
振り返ると後ろには昔出張動物園という名目で幼稚園に来た時に跨ったことのあるポニーとは比べ物にならないでかさの馬。
……馬?
『なんで馬がここに…』
「すみません、今移動中で…」
ぽろっと口から零れた言葉を馬を連れた男性が拾う。
馬からその男性に目を向けると彼が身に纏っているジャージには馬術部という文字。
へぇ…ここはそんな部活まであるんだ。
関心しながら視線を上げ顔を見ると眼鏡をかけたその人と目が合う。
いかにも【優等生】という言葉が似合いそう。こんな人でもこういう学校にいるんだ、なんて、見た目だけで判断ししかも偏見も交じりた若干失礼なことを考える。
なんか、どっかで見たことあるんだよなぁ、なんて、2人の間に沈黙が流れると眼鏡のこの人がそれを破った。
「結衣…?」
いきなり私の名前を呼ぶ男性に驚きその顔をよく見ると、昔よく一緒に遊んだ近所の友人、いわば幼馴染、の八軒勇吾と重なった。
『勇吾!?』
「お前なんでここにっ…」
『こっちのセリフだよ!だって…』
勇吾って頭良かったよね?たしか中学は大学までエスカレーター式の進学校、新札幌中に行ってた気がするんだけど。
いきなり現れた幼馴染に戸惑いながらそう言うと、明らかに、一瞬で、空気が変わる。
え、なんかまずいこと言った…?
この場にはかつてないほどの重たい空気と、かつての友人、もとい幼馴染の勇吾。
そして、うま。
転入早々、波乱の予感。
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