第6球


・貴女side



「何やってんの?」





外周5周のメニューから帰ってきたと思ったら、空気椅子をしながら足をプルプル震わしている3馬鹿が目に入る。





「ペナルティ」

「大堀が外周中に猫に構って1周6分オーバー」

「何で俺だけなんだよ!!」





4分超えるだけでも遅いのに、6分。
そりゃ日野ちゃんも怒るわ。


…って、猫!?





「猫!どこにいるの!?」

「外周の道んとこだけど、多分もういな…」

「見てくる!!」





大堀の言葉を聞き、話の途中だったけど猫を目指し駆け出す。

猫好き!!





「如月、行かない」





と、私が行くはずだった足は数メートルも進んでおらず、すぐに圧力を感じる。

恐る恐る振り返ると、かなり向こうには先輩に囲まれている日野ちゃんの姿。
えっ、この距離からこんなに圧力って感じるの!?





「は、はい…」





いつもは私のオアシスである彼も、こうゆう時ばかりは逆らえない。

素直に引き返し再びペナルティ中の3人の所へ戻る。





「よいしょ」

「っ、てめっ…ふざけん、な!」





空気椅子をしている秋本の太ももに座ると、一気に足のプルプルが増した。
おいおいだらしないぞ、女の子1人支えられないと。





「それにしても、日野ちゃん厳しいねえ」

「正直部の中でメンバーに1番厳しいけど、それ以上に自分に厳しいっつーか、あいつ何で選手じゃないんだろ」





日野ちゃんを見ながらそんな会話をしていると、3セット目が終了したらしく秋本が立ち上がる。

ああ、私の椅子が。





「本人曰く、センスが壊滅的で諦めたって言ってたけど体育は標準並みだよな」

「だったら選手出来そうなもんだけどな」

「そうだっ、日野ちゃーーん!!」





落ちていたボールを見つけた大堀は、目を輝かせながらそれを拾い日野ちゃん目掛け投げる。

といってもキャッチボール並みの緩い球だけど。


とっさに日野ちゃんは持っていたグローブを出したが





「バンザイ…」





ボールは日野ちゃんを通り過ぎ、後ろのフェンスにガシャンと当たる。

あ、日野ちゃんが睨んだ。





「大堀はペナルティ2倍な!如月乗せて!」

「はああああ!?」





言われた通り、倍のペナルティ(私乗せ)をこなした大堀が床に倒れこみながら息を吐いている。
これで重いなんて言ったらぶん殴っていたが、そんなことは言わないのがこいつの言いところ。





「ちくしょう…こうなったら」

「次はTバッティングなー、バッテリー組はこっちでタイムとるぞー」

「「ういーす」」





キャプテンの声に皆がゾロゾロ動き始める。

一方大堀はバットを持つと日野ちゃんに無理矢理持たせる。





「な に、え?え!?」





すると大堀は腰を落とし、スッと下投げでボールを投げる。

バッティングはどうか気になったんだろう。
しかしそれは大堀だけでなく、きっと誰もが気になったこと。

全員の視線が二人に向いたとき。


ブオン


とてつもない風圧が豪快な振りと共に鳴る。

ボールはと言うと、テンテンと床に転がる。





「だからどうしても球に当たらないんだよ!もうやめろよお前ら!!俺センス無いって言っただろ!」

「でもなんか…諦められない未知の能力が…」





ギャーギャーギャーギャーと二人の言い争いが続く中、秋本は「あいつ足だけは速いから瞬足の代走って可能性は…」なんて言ってる。





「いい加減にしろよ、大堀はいつもいつも俺を怒らせて…」

「だって日野ちゃん反応がいちいち大げさで、楽しいんだよね…」





ゆらゆらといかにも怒りそうな雰囲気を醸し出しながら大堀に近づく日野ちゃんに対し、大堀はビクビク恐れながら後ろに下がる。





「小学生か!!」

「日野ちゃんごめん〜〜〜〜!!」

「許さん!!」





とうとうキレた日野ちゃんと追いかっけこを始める大堀。

大堀は部内でかなり足が速い方だが、すぐに掴まり裸絞めをされている。
うっわあああ、日野ちゃん怖い…





「あ…駄目だ日野原の瞬足大堀限定だったわ」



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