第5球


・貴女side



カラカラと動きに合わせてジャグの中の氷が音をたてる。

とりあえずこれはベンチに置いて、コップ洗いに行こう。


そう思いベンチまで来ると、ふう、と大袈裟に言いながら立ち上がっている秋本が目に入る。
彼の周りにはいくつものクローバーの山が。





「終わったの?」

「おお如月、どうだ俺の腕力が火をふいた。これで女の子に秋本君の上腕二頭筋カッコいいって言われるぞ」

「私も女子だけど別に秋本君の上腕二頭筋かっこいいとは思わないよ」

「いやぁそこは俺がかっこいいから筋肉もかっこいいんだよ」

「ねぇ聞いてる?…聞いてないな」





完全妄想に入ってる。こいつ図体はでかいのに1番乙女な気がする。





「おっいいところに!如月ー!」

「大堀、なにっ…」





後ろから無駄にでかい声で名前を呼ばれ、振り返ると大堀が走ってくる。
…と同時に頭にフワリと何かが被される。





「え、なにこれって…宮田?」

「花かんむり」

「え」





後ろには宮田。
きっと頭に何か乗せたのはこいつだろう。

すると今度は左手を掴まれ薬指に何かをはめられる。





「結婚指輪」

「え」





こちらの正体は大堀らしく、私の指に手を添えている。

よく見ると薬指にはシロツメクサの花が。
頭に乗っているものを取ってみると、こちらもまたシロツメクサ花の茎が綺麗に巻きつけられ花かんむりになっていた。





「こっちのが女の子にモテそうじゃね」

「誰が考えたの?」

「宮」

「秋本みたいにわかりづらい腕力見せるとか、時間かけて四つ葉探すより、こうした方が女の子喜ぶと思って」

「君かよ宮田くん!!」





フット笑う宮田が不覚にもキュンときて、というかこんなに綺麗に作れる器用さとか大堀に関しては指輪なんて作ってくるし!勝手に薬指に付けてくるし!
あああああ!!

だんだん顔に熱が集まるのがわかり、手で顔を隠しながらしゃがみ込む。





「うおっ、なんだ!?」

「照れてる!照れてるぞ!」

「顔赤い」

「うるさあああい!」





こんなことで、しかもこんなやつらにキュンとさせられるとは。

3人を振り切ると先輩達の元へと走って向かう。





「うお!なんだ?」

「あら結衣ちゃん、素敵なかんむりね」

「もうやだあの3人どうにかしてください」

「仲いいな」

「やめてください」





ああ、ほんとに。悔しい。





「やべえ、今可愛いと思ってしまった」

「この前は可愛い面を被ったゴリラには惚れないって言ってたじゃん」

「ぎり彼女は人間だったんだよ宮田くん」

「そうだぞ宮田くん」

「…何言ってんの」





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