第2球
・宮田side
「大堀たち〜」
「お、如月部活行こーぜ!」
「それが先生に呼び出されちゃって、遅れるってキャプテンに言っといてくれる?」
「うわー悪さしたんだ!」
「ち、が、う」
からかう大堀の首を締めて頭をグリグリとやる姿を見ると、うちのマネージャーは日野ちゃんは口でシメ、如月は態度でシメるといった感じだ。
野球部のマネージャーは怒らせると怖い、で有名らしい。
「もう、あんたには頼めない。宮田と秋本ジャグお願いしていい?」
「いーぜー」
「大堀そろそろ離してあげて」
「うぅ…宮田あ」
涙目になって助けを求める大堀の姿を見て、さすがに声を掛けてあげる。
痛そう。
「それじゃ、よろしくね」
そう言うと、彼女は大堀の頭をポンとかなり強く叩き職員室へと向かった。
オレ達も泣いている大堀を一撫でして部室へと向かう。
「あーあ!まじ勿体ねぇよな!」
「何が?」
「如月だよ如月!顔は可愛いのにさ!オレ入部当初惚れたもん」
「あーそれは分かるわ、なんてゆーんだこれ、ギャップ?」
「うわー!こんなときめかないギャップ初めて知った!なっ宮」
「だめだめ、こいつそーゆーの興味無さそうだもん」
大堀の言葉を無言で聞いてると、秋本が勝手に決めつけ返答する。
まあ、どっちでもいいんだけど。
オレが答えないのには理由があった。
「なーんか顔は良くても冷めちゃうんだよなー」
「でもさ、不意に女っぽくなった時は良くね?」
「それは分かるけどさー、如月はアイドルのお面つけたゴリラだから」
「ぶはっ、なんだよそれ」
「可愛いお面付けててもゴリラには惚れねえだろ?どんなに仕草が女になっても」
「そりゃあ惚れねぇわ」
大堀が真顔でそんなこという中、爆笑している秋本。
それぐらいにしておかないと…
「「いてぇ!!!」なんだ!?」
大堀と秋本の頭になにかが当たったようで、
何が降ってきたのかと上を見上げる。
「うわっ鬼婆!」
「誰が鬼婆だ!!お前ら2人後で覚えとけよ!」
「ひっ如月違う!今のは大堀が」
「うるさい秋本ぉ全部聞こえてんだよ最初からなぁ!」
「「……」」
あーあ。だから言ったのに。
オレ達が話していた真上、3階には職員室。
職員室の窓際にはちょうど如月がいて、さらにはその窓が開いていた。
もちろん外で大声で話していたら十分聞こえる距離なのに、2人は気づきもせず
ペラペラと真上にいる本人の悪口。
オレ達の足元には二つの黒板消し。
あぁ、これを2人の頭に落としたのか。ナイスコントロール。
「おら如月、まだ話は終わってないぞ」
「はーい」
そうして、如月は窓から顔を引っ込め再び先生と話を始めた。
大堀と秋本はお化けでも見たような恐怖に満ちた顔をしながら部室の方へと走っていった。
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