第19球


・貴女side



「おーい如月ー入っていいかー」

『どうぞー』





お風呂上がり髪の毛も乾かし終え、明日の準備をしていると、扉の先から大堀の声が聞こえ返事をする。
いくらデリカシー皆無の大堀と言えど、無断で入ってくるような無神経な奴では無かったようで、少し驚く。

ガラリと扉を開け、大堀が入ってきたかと思ったら、さらにその先からも部員の声が聞こえてきた。





「待て大堀!」

「やめろ怒られんぞ!」

「これやるよ」

『いやどういう状況?』





何やら遠くの方で大堀を引き止めるような先輩や秋元達の声。
のにも関わらず、大堀は気にしない様子で飄々とした表情で私に何かを差し出す。

また大堀が何かしたのか…と呆れながら、大堀が差し出したものを受け取る。





「あ…」

「お、遅かった…」





黒い布製のものを開いたと同時に、部員が私の部屋に顔を覗かせる。

それを見てさーっと血の気が引く先輩達とは裏腹に、目の前の大堀は得意げな顔を見せた。





『何これ』

「女モノのパンツだろ?…グフォ!」

『いらんわ!!!』

「いわんこっちゃねぇ」





差し出されたのはこれまたセクシーな紐パン。

何こいつ!?私が普段からこんなもの履いてると思ってんの!?
怒りと恥ずかしさで、パンツを握りしめた右手で思い切りカウンターを食らわせた。





「いってぇな!」

『ありえない!やっぱ無神経だった!』





部屋に無断で入らないなんて些細なことで感心した私が馬鹿だった。
紐パンじゃなくても、下着を普通女の子に渡す!?





『しかもどこで手に入れたのこんなの…ドン引きなんだけど…』

「はぁ!?これは藤岡先輩が取ってくれたんだぞ!?」

『え"っっ…』

「え!?いや違う違う!誤解だって!!!」





そもそも何でこんなモノ持っているのかとドン引きした目でみると、大堀は藤岡先輩の名前を出し、その場にいた藤岡先輩の方に向き直す。
ここは旅館、まさか藤岡先輩が女湯に潜り込んで盗っ…!?
と嫌悪を含んだ目で藤岡先輩を見ると、先輩は慌てたように首を振り、事の経緯を私に伝えた。





『何だそういうことか…』

「僕如月にそういうことする奴に見られてたのかと思うとショックなんだけど…」

『いや冗談ですって』

「あら何してんの?」





涙目になる藤岡先輩に、流石にそんなことするとは本気で思ったわけではないと否定すると、向こうの方からぱるぱる先輩が歩いてきた。





「あらやだ結衣ちゃん、可愛いもの持ってるわね」

『えっ』

「履こうかしら」

「ぱるぱる先輩ィィ!?」

「嘘よ、でももらっておくわ」

『!?』





こうして、紐パン事件(?)は幕を閉じた。







×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -