第17球


・秋元side



夏合宿2日目の練習も終わり、その夜も大堀は相変わらず、着替え用の下着が無かった。





「あれ?大堀は?」

「少し前に先輩達の部屋に行くって出てったよ。パンツ買えなかったみたいだし、先輩に泣きつきに行ったんじゃない?」





そういう杉内にため息を溢す。
いくらうちの野球部は優しい先輩揃いとは言っても、後輩に貸せるパンツを持ってきている人はいないだろう。

今日のパンツはなぜか虎月の厳ついヤンキーにもらったみたいだけど…
明日はどうすんのか!?いくらなんでも手洗いして同じの履くだろ!?





「ユニホーム洗濯したから干すの手伝って」

「そういえば洗濯機あるじゃん!」





大堀のパンツの話題で盛り上がっている部屋の扉が開かれ、洗濯を終えた日野ちゃんが入ってくる。
いやそれで思い出したけど、洗濯機で普通に洗って明日使えばよくねぇか!?

一緒に洗ってやれば良かったのに、とつい大堀に同情すると、日野ちゃんは目を逸らしながら「別に良いかなって」と言ってのける。
確信犯だこれは。ドSだ。

そう心の中で呟いたが、隣で同じようにドSと口に出した井口が踏まれている様子を見て、心の底から言わなくて良かったと安堵の息をつく。





「そういやさっき小さいゲームコーナー見つけたんだけど、そこにあったクレーンゲームの中身、あれ多分パンツだよ」





不意の杉内の一言で全員が固まる。





「まんぷく旅館さん、パンツ忘れた人になんて鬼畜なんだ」

「仮に取れてもサイズ合わなかったり、好みのデザインじゃなかったり」

「き、貴重なお小遣いをそんな博打に使いたくねーな!」

「「「……」」」

「大堀に教えてやろーぜ!」





もしこれが当事者であったら、これほど酷い仕打ちはたまったもんじゃねーけど
今この問題に直面しているのは大堀である。

どちらに転んでも面白いことになるのは間違いないと思い、ルンルンで部屋を出ようとすると、後ろから何とも言えない圧力を感じる。





「洗濯物」

「「「っ!」」」

「干してからな」

「はいっ」

「やります!」

「すいません!」

「よろしい」




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