第15球
・日野原side
「疲れた〜」
「宮田生きてる?」
「…」
「駄目だ返事がない」
広いグラウンドで、使っているのは俺達野球部のみ。
当然いつもの倍以上の練習量になるわけで。
皆こたえているようだけど宮田は一段と疲れており屍のようだ。
「あらあらお疲れ様」
「旅館のおばちゃん!」
「夕食もうすぐだからね。その前にお風呂入ってきなさいな」
「お風呂」
「宮田が生き返ったーー!」
先ほどまで1番死にそうだったくせに、お風呂という単語を聞いた途端、宮田はルンルンとしていて足取りが軽い。
「お風呂の後ってなんかあんの」
「飯食った後に素振り」
「また汗をかくのか…」
「早く」
「宮田君ちょっと待ってねー!」
「風呂」
「分かったから!」
すぐに支度を済ました宮田と俺とは裏腹に、のんびりごそごそと物を探しながら鞄を漁る大堀と秋本。そんな2人に宮田は痺れを切らしたように急かす。
…性格でるな。
「やばい」
「どうした」
「寝巻用のTシャツ忘れた」
大堀の焦った声を聞き、自分の鞄からシャツを出す。
「予備、持ってきてるから」
「日野ちゃあん」
「ついでに歯ブラシも持ってない?」
絶対忘れて来るやつがいると思って持ってきたけど、さすが大堀。期待を裏切らない。
自分のとは別に持ってきていたそれも差し出す。
「あとね…」
「まだあんの?」
「パンツ、忘れた」
多少羞恥心もあるのか、目をそらしながら答える大堀を無視して
俺は宮田と風呂に向かった。
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