第14球
・貴女side
「鳥のさえずり」
「美しい新緑」
「晴天!」
「合宿日和!!」
「…俺、追試頑張ってよかった〜〜〜」
バスを降りた途端、改めて実感したであろう大堀が泣き始める。
まったくホント、感謝してほしいよ。
夏休み。
そう、今日から合宿です。
「そこの3バカ、荷物運べー!!」
「うぃ〜」
『大堀!これ、私の部屋に運んどいて!』
「え〜自分のは自分で運べよ〜…」
『あ〜いたたた…、なんかこの頃頭が痛いなぁ、どっかの誰かさんに勉強時間奪われて夜遅くまで勉強してたせいかなぁ、それともここ最近限りなく知能指数が底辺にいるお方と近くにいすぎて私の頭がおかしくなっちゃったのかなぁ、なんでだろうしんどいなぁ、そのお方は今頃念願の合宿とやらにでも参加してるのかなぁ…』
「あー!わかったよ!あれから事あるごとに俺をコキ使いやがって…」
「どんまい」
荷物を運んだらお世話になる旅館へ挨拶!
「よろしゃっしゃーーーッス」
「しゃッス」
ご飯も旅館の方が用意してくれるみたいでマネの私からしたらとてもありがたい!
各自自分の部屋に着いたら着替え!ちょっ早で!
もちろんマネージャーの部屋は部員達とは別に用意されています。
そしてグラウンドまでダッシュ。
「うおーっ貸し切り!広い!そして憧れの芝生!」
「学校だと他の部と共有だもんなー」
「どうして合宿だとキビキビ動きたくなるんだろう」
「わかる」
「おーい集合」
監督の掛け声で皆が集まる。
「よし、そろったな」
「監督ー他の学校は?試合してー」
「まあ落ち着け。練習試合を予定している相手チームの虎月高校と地元の鳥塚高校は明日合流だ、今日はうちだけ」
「ってことは?」
「お前らをグラウンドの隅から隅まで走らせてやるよ」
「怖」
監督がフフフと笑いながらえげつないことを言うと、部員達は監督を恐ろしいものを見るかのような目で見つめる。
聞いた等の本人大堀は「走んのばっかいやだーーー」と嘆いているけど。
「次の秋大までにしっかりチームを固めるからな。そうだな、今チームの目標決めとくか。キャプテンどうする?」
「甲子園。だろ?」
「最終的にはそうなりたいが...」
石橋キャプテンに投げかけた問を落合先輩が割って入り答える。
「秋の大会ベスト4。今のうちの実力ならこんなもんですかね。まあ1年生がどれだけ成長するかにもかかってるかな。特に大堀は潜在能力高そうですし、しっかり走って足腰鍛えればチームの要になってくれるのは間違いないでしょうし」
石橋キャプテンが大堀の名前を出すとピクリと反応を示し、次々と褒めの言葉が出てくると大掘はわかりやすくソワソワと怪しい動きを始める。
「早く走ろうぜ!」
((ちょろい))
「とりあえず目先の試合に勝って、地道に力をつけるのがうちのチームの色だと思います」
「よし、じゃあそれを念頭に今回の合宿に参加しろ」
「気合い入れていけー!」
「「ウォーッス!」」
皆の声が広いグラウンドと晴天の下に大きく響き渡る。
そんな部員達をジャグの用意をしながら見つめ歩く。
『日野ちゃん!私達も頑張ろうね!』
「うん、全力でサポートしよう」
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