第12球
・晴見side
パンパン
ベンチの前にしゃがみ込み、何かを拝むような様子の秋本ちゃんと宮田ちゃん。
ベンチの上にはグローブが立てて置いてあり、それには大堀ちゃんのアホな写真が貼られていた。部活前に何やってるのかしら。
そう思っていたのは私だけじゃなく、彼らと同じ一年生の日野原ちゃんもそれが気になったらしく声をかけているのが目に入った。
「なにやってんの」
「御祈願」
「えっ、大堀追試も赤点だったの!?」
「そう、今日の再補修兼再追試真面目に受けないとさすがに夏の合宿行けない」
「秋本と宮田は追試パスしたんだな…」
「あの時は先輩たちにすごいプレッシャーかけられたから」
「おっかなくて頑張った。…んだが、大堀には響かなかったようだ」
日野原ちゃんは現状が理解できたのか、先ほどの2人と同様大堀ちゃんの写真が貼ってあるグローブを拝み始めた。
…そろそろ話し終わったかしら。
「秋本ちゃーん、ピッチング付き合って」
「うっす」
「なあにあれ、祭壇?」
「いやーもう大堀の件は神頼みしかないかなって」
帽子とグローブをつけながら秋本ちゃんは呆れたように話す。
またまたあ、そんな大袈裟な〜
流石に合宿かかってるし釘刺しといたし
そう言うと「そこを裏切るのが大堀なんですよ」と言う。
「ま、でも今回は午後の授業中如月が鬼指導してたんでちょっとは勉強してたと思うんですけど」
「結衣ちゃんホントに大堀ちゃんの勉強みてあげたのね…」
集中力も理解力も欠落しているあの大堀ちゃんの面倒を…
しかも自分の勉強時間である授業中にわざわざ…自分の時間を割いてまで…
優しすぎて涙が溢れてきちゃう。
…?鬼指導…?
「はい、授業中なのに先生のことなんて全く気にせず如月は大堀の頭教科で殴ってました。あいつら今席隣なんで」
「…」
『だから、ここはこうだから答えはこうなるの』
『なるほどなあ』
『はい、じゃあ復習』
『…、っと、なんだけ?』
『あんったは何で1回で理解できないの!理解力なさすぎ!馬鹿!もうこっちが諦めたくなるわ!』
『いってえ!殴ることないだろ!クソゴリラ女!』
『口には気を付けなさいよ…大堀い…!』
『ひぃ…!』
『おめーら大堀の再追試合格のために俺の授業ほっぽって追試の勉強してんのは100歩譲って大目に見てやる…だからもうちっと静かにやりやがれ!喧嘩すんな!』
「…とまあこんな感じで。」
「結衣ちゃん…スパルタ…」
秋本ちゃんから勉強時の様子を聞いてみれば、大堀ちゃんも大堀ちゃんだけど結衣ちゃんも大概ね…。
これで再追試も赤点になったらお互い可哀想すぎるわ!!
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