第10球


・大堀side



「大堀ー!」

「なに?」

「ぱるぱる先輩が何か用あるってー」





昼休み、昼飯を食い終わり秋本や宮と話していると廊下から如月に名前を叫ばれる。

そっち側を見ると如月の後ろにはぱるぱる先輩が顔を出して手を振っていた。





「ちょっと付き合って欲しい所があってさ」

「俺だけっすか?」

「そうそう大堀ちゃんじゃなきゃダメなのよ」

「あいつら2人じゃなくて俺だけ」

「そう大堀ちゃんだけ」

「行きます!」





そう言うとぱるぱる先輩は如月に礼を言い、如月は教室へ入って行った。
そうして俺はぱるぱる先輩に付いていった。

それにしても、まさか先輩直々に俺んとこ来るなんて…
すげー大事な話なんかな。





「お昼食べた?」

「うっす」

「じゃあ時間かかっても大丈夫ね」





時間かかるほど重要な役目を俺に!?
やべぇ、心臓がドキドキしてきた。

そばらく歩き辿り着いたのは2年3組の教室。
ここは主将のクラス…

…ってことはやっぱり大事な話…!!





「用があるのは大和ちゃん」





……じゃなさそう!!

雰囲気でわかった、これは怒られる…!


けど俺は主将に怒られるようなことはしてない!!…はず…。
「俺に何か言うことはないか」と問い詰めてくる主将に対し、俺は否定の言葉を続けるが、結局主将の圧力に押され白状する。





「部室にずっと置いてある洗ってないソックス俺のです」

「即刻持ち帰るか日野原と如月に土下座して洗ってもらえ!他ッ」





他…





「保護者に貰った差し入れのお菓子、全部食ったの俺です」

「あれ食べたの大堀ちゃん!?楽しみだったのに」

「あとでシバく、他!」





他…





「ぱるぱる先輩の…カバンにしょう油こぼしたの俺です…」

「あん?あれお前か」

「ずいまぜんんん」

「お前俺のコップにも虫落っことしたらしいな」





いつもの表情とは打って変わって野太い怒気の含んだ声。
怖いし何で虫の事までバレてるんだ…!





「はぁ…もっと他にあるだろ、秋本と宮田は大丈夫なのにお前だけってことが」

「俺だけって…今日の放課後再追試があるくらい」

「それだあ!!お前またのらりくらりと逃れられると思ってないだろうな」





それだけのことで呼ばれたのか?と思いながら今日の再追試の事を話すとまさかのそれの事だったようで。
ずいっと主将の顔が近づく、…主将も怖い…





「夏休み入ってすぐ何がある?」

「合宿!」





そう問われ、すぐに頭の中は合宿の事でいっぱいになった。
中学では無かった合宿!

楽しみで楽しみ過ぎて入学前からワクワクだったもんなー!





「そうだなその合宿はな、今日の追試をパスできないと参加できない」

「!」

「さらに夏休み中ずっと補習。知ってるよな?」

「……なんか、そんなこと…先生が、言ってた気がするような…」

「勉強してあるのか?」





頭の片隅に閉ざされたあった先生の言葉をうっすら思い出していたころ、
主将の言葉が突き刺さり、素早く振り返りこの場から逃げようとダッシュをした。





「あっ、まて大堀…!」

「ッ………き…木村先輩の馬鹿力ぁああ!!」





数メートルも進まず、どこに隠れてたのか俺のワイシャツの襟を掴んで離さない木村先輩。
俺も必死に逃げようと試みるが、木村先輩の力には全然適わないし離すそぶりもない。





「あらナイス捕獲」

「大堀、合宿行きたいか?」

「行きたいです!」

「じゃあ真面目に追試受けなきゃな、今日1日は授業放棄していいから死に物狂いで追試の勉強しろ」

「…」

「お返事は?」

「ふぁい」





173pのぱるぱる先輩と178pの主将と179pの木村先輩に囲まれる166pのオレ。

これは外から見たら下級生を脅迫する先輩の図にしか見えない!!(涙)



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