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・貴女side
入学式当日に話した沢村栄純というクラスのバカ男子。
沢村はコミュ力がありえないぐらい高く、すぐにクラスでも親しみやすく、話しやすい関係になった。
少なくとも、男子の中で一番仲がいいと言えるレベルぐらいには、毎日よく一緒にふざけてる。
まあ沢村は男女関係なく、誰とでも常に仲良くしてるけど。
そして(自分で言うのもあれだけど)クラスでワーストバカと言われている私と沢村。
それは入学して一発目に行われた実力テストという名の小テストで判明した。
隣の席だということ、バカ同士だということ、仲が良くなったということのトリプルコンボで、いつの間にか、毎回行われる小テストの結果で、負けた方が勝った方にお昼のおかずを分けるという勝負が行われるようになった。
結果、私の勝ち。
これはもう毎回ほぼ決まった結果だ。
いくら私も馬鹿とは言っても、沢村と私との間には越えられない壁があるようだ。
それでも毎回勝負をやめない沢村に対して、本当の馬鹿だと呆れつつも、今回は自己最高点を取れたことに喜んでいると
「え、1年からその点数ってやばくね」
『は?』
真後ろから聞こえてきた、聞き覚えのない声に驚きながら振り向く。
そこには見た事のない、背の高い、イケメンが立っていた。
え、誰?この人?
目線をその人の顔から足元に下げると、上履きの色は2年生カラーだった。
先輩だ。誰?知り合いだっけ?記憶にないけど。
「あ!御幸一也!」
「おい、先輩だぞ」
『なに、野球部の先輩?』
「一応な!」
沢村曰く一応、先輩らしい。
野球部に知り合いなんていた記憶がない。
にも関わらず、この人私の点数見てバカにしたよね?あれ?したよね?
いや、気のせいだよね。だって初対面だし。
「小テストで21点って…30点満点?」
「100点満点っスよ。」
「ぶっ…」
え?
さらっと私が持っているプリントを覗き込んできたと思ったら、吹き出したよ?
え?
失礼も甚だしいな?
「お前…バカなんだな。琴原さん」
さっきまで腹抱えていると思ったら、私の顔を覗き込み、最高に失礼な発言をしてくる。
えっなんで名前知ってるの?怖っ
ゾゾゾと背筋が凍りながら、失礼発言をかましてくるイケメン先輩の顔は、どんなに表情が崩れてもイケメンのままで。
いや、顔なんて関係ない。
失礼通り越して先輩とか関係なく、むかつく感情しか湧いてこないんだけど。
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