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・御幸said
学年が1つ上がり、新しいクラスメイトの顔を覚え始め、新入生の部活も本入部になって少し経った頃。
今年の1年も結構豊作だ。剛腕降谷、亮介さんの弟の小湊、松方シニアの東条に金丸。そして沢村。
まさかあの時の問題児沢村が入るとはな…。
あいつおもしれぇんだよな。
くつくつと笑みを溢しながら、以前あいつがまだ中3の時に共にバッテリーを組んで、東さんと対戦した時の事を思い出す。
「なぁ御幸、聞いたか?」
「ん?何が?」
スコアブックを眺めていると、同じクラスであり、同じ野球部である倉持に声をかけられ、顔を上げる。
倉持は俺の方に向かって歩いてくると、前の席に腰を掛ける。
「ほら、1年マネの琴原。もう告白されたらしいぞ」
「ふーん」
「ふーんってお前な…」
野球部に新しく入った1年のマネージャー、琴原結奈。
正直言ってめちゃくちゃ可愛い。
入部初日にゾノや麻生たちが大興奮していたことを思い返す。
「いーよな琴原。可愛い上に性格よさそうだし。女子の代表じゃねーか」
「え?倉持狙ってんの?」
「マネ狙って野球やるほど暇じゃねーよ」
「だよな」
別に部内恋愛禁止ってわけじゃないけど、少なくとも俺が知っている中ではマネージャーと選手でできていると言う話は聞いた事がない。
というより、マネのことを気にしながら野球を出来るほど、ふわふわした部活でもない。
そもそも俺たちの青春は野球>恋愛って感じだしな…。
なんてことを考えながら、またペラリとスコアブックを捲った。
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