黄瀬くん黒子くん火神くん

 
「わー!緑間っちと美原っち!偶然っスねー!って、あれ?もしかして…」
「デートですか」


先程話題に上がった人物たちの内の二人と、プラスアルファが街の人込みの中から現れた。
よく見知った声と顔である。

「久し振りだね」
「……」

黄瀬くんと黒子くん、そして黒子くんのチームメイト火神くんだった。
彼らもやはり、私たちの繋がれた腕を凝視。

「まじっスかあぁぁ!」

往来の真ん中でモデルが叫んだ。


「漸くっスかー、よかったっスねー。うんうん、いいっスねー」
勝手にテンションをぐいぐい上げている黄瀬くんは、何度も一人で頷いている。
かと思いきや、急に私に視線を合わせてきて「おめでとうっス」とにっこり笑った。相変わらずその顔は抜かりなくきれいだ。
ありがとう、と言おうと口を開いたとき、
「近いのだよ」
真太郎が彼の顔を押し返した。
火神くんは話の流れについていけていないようで、顔が完全に引いていた。

黄瀬くんは、出会ってしまえば立ち話では済まなかった。
場の主導権を握った彼に押し流され、殆ど無理矢理な形で私たちはマジバでテーブルを挟み向かい合った。
道すがら黒子くんは止めたし、火神くんはなんで俺まで、とうんざりしていたにも拘わらず。
しかも、私と火神くんがきちんと顔を合わせるのは今日が初めてだ。私は彼のことを試合で見て知っていたけれど、彼は私のことを知らないのだ。
聞けば、黒子くんと火神くんも、黄瀬くんに偶然捕まったところだったのだそう。
スペアのバッシュや練習着を見に来ただけだったのに。合掌。

「洛山との試合が終わったあとだよ。その日の夜」
彼にも洗い浚い吐かされそうになって、取り敢えず付き合い始めたタイミングだけ答えた。

「いやーいつだいつだと思ってたんスよ。ねー、黒子っち」
「はい」
「お前らもか…」
真太郎が唸り、頭を抱える。
そんな彼を気にも留めず黄瀬くんは回顧し始めた。
「中学卒業するときは、とうとうくっつかなかったなーって。美原っちが秀徳行くって聞いたときはめちゃくちゃ驚いたっスよ」
「真太郎から拒絶されない内は、絶対諦めないって、決めてたから」
勿論、秀徳は元から私の志望校でもあった。決定打は、やはり真太郎だったけれど。
「すごいですね」
おめでとうございます、よかったですね、と言って黒子くんは優しく笑う。
さつきだけじゃない、私はこの笑顔にも何度も慰められてきたのだ。素直にありがとう、と返した。

「一時はどうなるかと思ったっスよ。赤司っちが―――」
「黄瀬くん」
黄瀬くんがへらりと赤司くんの名前を口にすると、黒子くんが透かさず制した。珍しく目付きが険しい。
「うっ、ごめんっス、黒子っち…!」
どうやら、秀徳が洛山に負けたからという訳ではなさそうだ。本気で彼に凄まれて、黄瀬くんは謝罪を口にした。
しかし、黒子くんは冷静ににべもなくそれをあしらう。
「僕じゃなくて、緑間くんに謝って下さい」
確かに、と思い直したらしい彼は、ごめんっス緑間っち!と両手を顔の前でぱんと合わせた。

「……」
真太郎が、ものすごい怒気を放っている。
「行くぞ、あすか」

荒っぽく椅子から立ち上がった彼に、慌てて私もあとを追う。
すると黒子くんが、
「黄瀬くんがどうもすみませんでした。デート、楽しんで下さい」
軽く手を振ってくれた。
お店を出るとき、黄瀬くんがまたも「緑間っち本当にごめんっスー!」と叫んでいた。

今度会ったら覚えていろ。
折角の初デートのランチがファストフードって。

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