過去拍手文

少年よ、大志を抱け

「他の仲間達は赤い魚なのに自分だけが真っ黒な魚がいました。ある日、仲間達がマグロに食べられてしまいます。真っ黒な魚は独りで海を泳ぎ回りそこで色んな発見をしました。やがてマグロに怯える赤い魚達と出会います。真っ黒な魚が「ぼくが目になろう」と言いみんなで集まって大きな魚のふりをし、マグロを追い返しました」
「小さくてもみんなで力を合わせたら大きな敵をも倒せるという話ですか?姉上」
「そうね。でもね、総ちゃん。違う捉え方もあるのよ」
「へぇー、何ですか?」
「それはね…」









「人それぞれ個性があり役割がある、自分がみんなと違っても自分にしかできない事があるんだってさァ」

甘味屋で見回りという名のサボり中に沖田は団子を手に持って隣に座る銀時に言った。

「へぇーなるほど」
「だから俺も俺にしかできない事をするんでィ」
「何?」
「土方抹殺」
「あぁ、個性を存分に発揮できてるわ」

銀時は頷きながら皿から団子を一本とる。

「んで、率先して目になったのは、色んな体験をした後の自分には他の人が見えないものでも自分には見えるっていう意味」
「何か凄い自信だな」
「でもそうでしょ?近藤さんの為なら他の人が躊躇するような殺しを俺はやれやすし」

団子を口に入れようとした銀時の手が止まる。顔をしかめ沖田を見た。

「ちょっ…甘いもん食べてっ時にそういう話止めてくれる?」
「あれま、すいやせん」

銀時は溜め息を吐き団子を口の中に入れた。

「もっと良いもん見ろよ、少年」
「手遅れですねィ」
「そんなことないぜ、海は広いし」
「こんな言葉知ってやすかィ?井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る」

沖田は串を口に加えながら空を見上げた。

「沖田君の口からそんなことわざが聞けるなんて思わなかったよ。どういう意味?」
「知識は狭く深く?俺にはこれしかないってことですかねィ」

沖田は刀を手にする。

「んじゃ、旦那。俺昼寝してきやす」

そう言うと団子のお代を椅子に置いて手を振り去って行った。


「…寂しいねぇ」

銀時はボソッと呟き空を見上げた。






『スイミー』のお話。

『井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る』
中国の言葉に日本が後付けした言葉。されど〜は他の言葉もあるらしい。
大河ドラマの近藤勇さんが言ってました。


沖田は姉がいなくなった今、自分には近藤と刀しかないんだ、

銀時は刀を振るうことしか生き甲斐がないなんて寂しいなぁ、と思うお話でした。



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