小説 1

前向きにしてりゃあ何とかなる

(近、土)

埃と血のにおいが充満し、刀と刀がぶつかり合う金属音、叫び声、罵声、気合いを入れる声が響きわたる。

目の前の敵を下から逆袈裟に斬ろうとした。しかし相手は後ろへ引き顎を斬るだけに終わる。次はこちらの番だと言わんばかりに胸を血で染め右袈裟懸けを打ち込もうと踏み込んできた。

「…こんの…!!」

何とか右に身をひらいて避けると同時に相手の脇腹に突きを食らわした。声を上げよろめく頭に向かって思いっ切り刀を叩きつける。
頭上から血飛沫と共に崩れる体。力いっぱい咬ましたせいか眼球まで飛び出している。

ここまでの手練れがくるのは計算外だった、と土方は死体を見ながら思う。此奴だけではない。殆どの攘夷志士が修羅場になれた強者ぞろいだった。

「山崎!現状!!」

どこに居るのか分からない監察の名を呼ぶ。

「東出入口の五番隊が苦戦しています。このままでは全滅ですね」

敵方には此奴が見えないのか、存在感の無い地味な監察はこんな修羅場でいつ何時でも上司に呼ばれると即応える。以前三番隊隊長でもあり監察の仕事もできる斉藤がこんな真似はできないと称えていた。

「武田…屯所に帰ったら切腹だコラ」

ついでに局長の名を不用意に呼び敵方の士気を上げてしまった藤堂も切腹。

「井上さん東へ」
「はいよ!」

手短に指示を出すと地味な男は屋根裏へと消えていった。

他の隊の様子など考えている場合ではない。すぐにまた数人こちらへ向かってきた。土方はチッと舌打ちをすると右から迫る白刃を棟で弾き返し胴を一刀に斬りそのままの剣筋で別の相手に逆袈裟を懸けてやる。

「!!」

突然体に衝撃を感じた。誰かが捨て身の体当たりをしてきたらしい。
よろめき倒れないように足に力を入れるが、足元は血と臓器で辺り一面泥濘ができている。うまく踏ん張れず滑り倒れ込んでしまった。

―チッ、格好悪ぃ

素早く柱に手を掛け立ち上がろうとするが、敵もそんな隙を見逃すようなバカではない。

「うおおぉぉぉ!!!!」

獣のように吼え剣尖を光らせ土方の頭にめがけて刀を振り落とす。

思わず目を瞑る土方。
しかし来る筈の衝撃は無く目を開けると大柄な男の背が目の前に映った。

「トシ、大丈夫か?!」

その男は受けた相手の剣をなぎ払うと小手に蹴りを食らわし刀を落とさせ躊躇した隙に「てりゃあ!!」と、気合いと共に胸へ突きを食らわしそのまま上へ剣尖を上げる。

「すまん。近藤さん」
「総悟に笑われるぞ」

立ち上がり詫びを入れると男はニカッと笑った。

こんな時でもそんな笑い方するのはウチの大将ぐらいなもんだ、土方は男につられてニヤリと笑う。




『俺がいない間、近藤さん頼みますぜィ』


そう言い残し京へ行った亜麻色頭の子供を思い出す。護られる立場になってしまったか、本当に笑われるな。


「まったく、上も上だぜ。ウチのナンバー1、2取りやがって」
「帰ってきたらこの修羅場を潜り抜けた事を総悟と永倉に自慢しようか」
「その時はさっきの事黙っててくれ」
「ガハハハ!!」

背中を合わせる男は豪快に笑う。同時に刀を持ち直す音が聞こえてきた。

「次の飲み代はトシの奢りな」
「それぐらいお安いことで」




あの子供にバカにされるぐらいなら。




最近買った新撰組の小説を参考に頑張ってみたらこんなことになりました。

…まだまだ精進しないと。


銀魂の中じゃあ剣の腕のナンバー2は土方さんなのかな。そうだろうな。

…捏造ホント申し訳ない。


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