小説 1

アナタがいないなんて有り得ない14

日が昇り、朝になった。

夜中の騒動の跡があちらこちらに残っている。隊士達はその後片づけに追われていた。


「へぇー、そんな事あったんですね」
「だから俺の部屋の襖が粉砕されていたのか…」

夜勤明けの二木と朝帰りの藤堂が縁側に座り中庭を見ていた。

「大変だったんだぜィ?愛と憎しみは紙一重って言うけどさァ。凹助も気を付けた方がいいぜィ?」
「いや、俺はそんなモテねぇし。さっすが副長だな」
「オイ、総悟。まだそのネタ引っ張ってんのか」

三人が後ろを振り向くと青筋を浮かべた土方が煙草を手に見下ろしている姿が目に入った。

「あ、土方さん。裁判はいつからですかィ?」
「お前を斬ってからだ」
「副長」

腰の刀に手を掛け抜こうとする土方に井上が袋を片手に近付いてきた。

「たまたま寄ったコンビニで見つけまして…最近食べていないと聞いておりましたので副長に、と」

そう言い袋の中からマヨネーズを取り出して土方に渡した。

「お、おぉ…!!」

マヨネーズを持った土方の手が震え、目が輝く。

「恩に着る!井上さん!!」

土方はマヨネーズを懐に入れ、井上の両手を握り激しく上下に振ると自室へと走っていった。

沖田が井上を見上げる。

「…源さん、甘やかしすぎでさァ。あと最低十年は摂取止めさせておかないと本当に血がマヨネーズになりまさァ」
「ふむ…。あげた時の嬉しそうな顔が面白くてな。つい」
「…い、犬?」

井上の言葉を聞き、二木が呟く。

「中毒って怖いでさァ…」

沖田は欠伸をし、空を見上げた。




――数日後、

マヨネーズ工場の機械は元に戻り、屯所では何事もなかったかのように大量のマヨネーズが倉庫にあった。

「副長、すっかり元に戻ったな」
「やっぱり普段通りの副長が良いや」

食堂でサンマが隠れるほどこんもりとマヨネーズを盛る土方を見ながら原田と山崎は溜め息を吐いた。





Fin...






何かもう色々と申し訳なかったです。
マヨネーズ摂取は程々に。


読んで頂きありがとうございました。


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