小説 1

女の嫉妬って怖いというが男だって怖いと思う

(沖神)

通報を受け公園に来た原田は愕然とした。


根本から折れたもみの木、半壊したベンチ、鎖が引きちぎられたブランコ、すべり台には無数の銃痕、地面には所々穴が空いている。

朝は犬の散歩やジョギング、昼間は子供達が遊び母親達は子育ての話に花を咲かせる…そんな庶民の憩いの場がたった数時間で無惨な姿に変わり果てていた。



「ひでぇな…」


未だあちらこちらに煙が吹いている様を見て思わず呟いてしまう。



「ほんとですねィ」
「ほんとアルな」
「お前等がやったんだろぉーがぁ!!!!」

あっけらかんと応える亜麻色とピンク頭の子供に向かって叫ぶ。


「まぁまぁ、そんなに怒るとタコになるぜィ」
「そうそう、毛生えなくなるアルヨ。私パピー見てるから分かるネ」
「誰がタコだ!!後この頭は剃ってるんだ!!ハゲてねぇ!!」

これが噂に聞く沖田とチャイナ娘の喧嘩か、ハァと溜め息をつく。
いつも通報を受け行くのは土方か山崎の役割なのだが、今回はたまたま原田がこの様を見る事になってしまった。


今から数十分前、原田が見回り途中に泣き叫ぶ子供を連れた母親が化け物を見たような凄い形相で助けを求めてきた。
これはただ事ではないとパトカーを飛ばし公園に向かうとそこには過激派攘夷志士でも天人でもなくよく見知った子供達が暴れていた。
…あ、片方は天人か。

「だってチャイナが」
「だってサドが」
「だってじゃねーよ。周り見てみろよ。まるでテロでも起こったかのような有り様だぜ?」

ふてくされる2人に説教をする原田。
亜麻色頭の方は一応ウチの斬り込み隊長なんだが…。

再び溜め息をつくとボリボリとハゲ頭を掻く。

「まぁ、理由ぐらい聞いてやるよ。何が原因?」

だいたい自分は説教する柄じゃない。

「俺は真面目に公務にあたってたんでさァ」

腕を組み、そう話し出す沖田に神楽は食ってかかった。

「なぁにが真面目にアルか!公衆の面前でイチャついてたアル!警察のクセに」
「だーかーら!!あれは倒れてたから介抱してやってただけでィ」
「フン!口では何とでも言えるネ!」
「あんだとクソチャイナ」
「やるかクソサド」
「はいはいはいはいストーップ!!」

危うく再戦の火蓋が切って落とされようとしたところで慌てて原田が止めに入る。こいつはもしかしてあれか?

「沖田、その倒れてた人って女?」
「あぁ、20代前半ぐらいの女の人でさァ。気分悪そうにしてたから背中さすってやってたんでィ」
「その人は?」
「いつの間にかどっか行っちまった」

…二日酔いか何かだったのだろうか、コイツ等がドンパチやり始めたから逃げたのだろう。

「だいたい何で怒るか意味分からねェ」

ジッと神楽を見る沖田。

「お前がその女の人の胸と私の胸比べるからアル」
「酢昆布ばっか食べてっから胸の成長止まるんでさァ」
「す、酢昆布をバカにしたアルな!」

またやり始めた。全くもって収まりそうにないな。原田は土方にでも連絡しようかと携帯電話を取りだした。

「胸なんて揉まれたら大きくなるもんでィ。旦那か眼鏡に頼んだらどうですかィ?」
「そ、そうなのか?じゃあ定春に頼むネ」

ズコー!!とコントさながらの転けっぷりを見せる原田。

何?獣プレイですか?ていうかそんな返しで良いのか?

さすがの沖田もその発言には目を丸くする。

「え?」
「え?じゃねーヨ。お前が言ったんダロ?早速帰って揉んでもらうネ!」
「いやいやいや…待てチャイナ」

キラキラした目で帰ろうとする神楽を慌てて沖田が止める。

「何アルか」
「いや、その、な。そういう行為はな、本来その…恋人にしてもらう行為であって」
「お前さっき旦那か眼鏡って言ったアル。銀ちゃんと新八の事ダロ?」
「まぁ…そうだけどねィ…それは」
「あの2人は恋人じゃないアル」

真面目な顔で言ってくる神楽に困惑した顔の沖田。

「………プッ!…ウププ…!!」

そんな2人のやり取りを見ている原田は顔を赤くして必死に笑いを堪えていた。

要するに沖田が女の人を介抱しているところを神楽が発見し、なぜかイチャついているように見えたのだろう。神楽はそれが気にいらなく沖田に食ってかかった。沖田も沖田で喧嘩売られた意味が分からずとりあえず買った。

しかし話を聞いている第三者からしたらどう考えても淡い青春物語である。
そしてさっきの会話を聞いている限り沖田もまんざらではなさそうだ。

あー楽しい。良いねぇ。若いって。

ニヤニヤしながら2人のやり取りを見ているとサイレンの音が近づいてきた。

「総悟ォォー!!またお前等かァァァ!!!」

パトカーから降りて来るなり叫ぶ黒髪の目つきの悪い男。

「ちょっ…神楽ァ?!おつかいから中々帰って来ないと思ったら何してんの?いい加減損害賠償請求されちゃうよ!そしたら銀さん夜逃げしちゃうよ?!」

反対側からは銀髪の男。




さぁ、保護者様達のお出ましだ。




恋愛感情が無いとしても喧嘩ばっかりしている2人が好き。


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