小説 1

クサノオウ11

――三日後、

先日捕獲した攘夷浪士の拠点に土方と一番隊が踏み込む。山崎もあれから拠点調べの方へ向かわせ、龍昇組本部の間取りの事は他の監察に任せていた。

「捕縛者は以上か?」

土方は縄に縛られ転がされている浪士達を見渡す。そこへバズーカを担いだ沖田が鼻歌を歌いながらやってきた。

「土方さん、最高記録出しやしたぜィ。何と一発16人飛ばし」
「その中に味方が何人か混ざっていなかったか?」

あちらこちらに煙が立ち上っている。沖田は刀を使わず終始バズーカを使っていた。

「無駄にぶっ放しやがって…このアホ」
「刀を使わずどこまでやれるか己の力を試してみやした!!」
「刀を使わずお前を撲殺してやろうか」

そう言い青筋を浮かべる土方の元へ山崎が駆けよってきた。その体からは所々煙が出ている。バズーカの巻き添えをくらったのだろう。

「副長!18名捕獲、6名死亡、今分かっているのは以上です」
「分かった。まだ瓦礫に埋まっているかもしれねぇから引き続き調べろ」

「分かりました」と返事をし、山崎はその場を後にした。

龍昇組に行った十番隊もそろそろ終わっている頃じゃないだろうか、煙草に火を付け紫煙を吹かす。

「俺は屯所に戻る。後は頼んだぞ」
「あいよー」

バズーカを置き、やる気が無さそうに欠伸をする沖田を見て土方は溜め息を吐いた。








「おや…」

銀髪頭をボリボリと掻きながら周りを見渡す。

龍昇組の主人から二回目の配達を依頼され銀時達は訪れたのだが、目の前の惨状に目を丸くした。

男達が血を流して倒れている。見知った黒い服を着た男達が忙しそうに行き来していた。

「うわぁ…嫌な時に来ちゃいましたね」
「依頼横取りされたアルカ?」

銀時の隣では顔をひきつらせている新八と傘を差し首を傾げている神楽がいる。

この屋敷に真選組がいるという事は例の麻薬の件だとは分かるが、こんな人を斬り殺す程の事だったのだろうか。

眉をひそめ周りを見ていると隊長服を着たハゲ頭が目に入った。銀時は近付いて行き、人差し指でハゲ頭の脇腹をつつく。

「うわォッ?!」
「ここの主人から宅配依頼されていたんスけど、これはもうムリっぽい?」

確か原田さんと言ったか、変な声を出し横に飛び退く。銀時に聞かれた原田は目を丸くし「あ、あぁ」とつつかれた脇腹をさすった。

「万事屋か…。見ての通りだ」
「やっぱムリ?…あーぁ、結構良い報酬料だったのになぁー」

そう言い銀時は鼻をほじり、横目で原田を見た。

「つかさ、ヤクザといえども一般庶民じゃん。不逞浪士じゃあるまいし、天下の真選組が刀持ち出さんでも」
「ち、ちげぇよ!!…俺らが来た時にゃあこうなってたんだ」
「は?」

焦ったように喚く原田に銀時は怪訝そうに顔をしかめる。

「数日前にヤクザ同士の抗争と思われる殺人事件があったんだ。恐らくその報復行為かなんかじゃね?」
「ふーん」

「余計な仕事増やしやがって」とブツブツ言っているハゲ頭を尻目に取れた鼻くそを指ではじいた。
そこへ隊士がやってきて原田に向かって敬礼をする。

「隊長!屋敷の奥で子供らしき遺体が…」
「何?何で子供が」

原田は部下の報告に顔をしかめた。側で聞いていた銀時が「あー」と声を出し腰に手をやる。

「ここの主人は見た目は子供、頭脳は大人の名極道らしいぜ」
「どこかで聞いたようなフレーズだが…つかなぜついてくる?」
「だって一応こちらの依頼主だぜ?生死ぐらい確認しねぇと」

屋敷の奥に向かう原田の後を銀時が続く。後ろで「待って下さいよ」という新八の声がした。



「間違いねぇ。依頼主だ」

銀時の足下には長い黒髪で小さな背丈の者が皿のように広がった血の上に横たわっていた。
周りも蹴倒された家具やら斬り刻まれた襖、他に数体の死体が転がっていた。

「背中を袈裟に斬られています。逃げようとしたところをやられたのでしょう」

死体を調べていた隊士が立ち上がり原田に言った。

「頬の傷は新しくねぇな…しかし…見た目はまんま子供じゃねーか。気分悪ぃなぁ」

原田は嫌そうに眉間に皺を寄せハゲ頭を掻く。

「銀さん、もう行きましょうよ。僕何か気分が悪くな…ウェ…」
「ちょ…新八、リバースは止めろ」
「…こいつが依頼主だったアルカ?」

青ざめ口を押さえている新八の横で神楽が眉をひそめる。

「は?…あぁ、この前はお前車の中で爆睡してたから見てねぇのか」
「いや、見たネ」

神楽の言葉に次は銀時が顔をしかめた。

「いやいや、寝てたじゃん。鼻提灯膨らませて爆睡してたよ?」
「違うアル。届け先で見たアル」
「はぁ?あそこには地味な使用人しか」
「大きい家じゃなくて小さな家ネ」

益々訳が分からない。幽霊でも見たのだろうかこの桃色は。
銀時と同じく顔を歪めている原田も首を傾げ神楽を見る。その後ろで胃の中の物を押さえきれなくなったのか新八が外に向かって走り出した。







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