小説 1

小さな要求をのむと後々断れない 3

一瞬にして三人の男を地に伏した一方的な戦いを神楽は目を大きく開け見ていた。白い布で覆われた男は神楽の方を向く。

「ほれ、おめぇも手伝え」
「!!」

男が持っていた番傘を神楽の前に放り投げた。バサッと音を立て目の前に落ちる。

神楽の頭の中で稲妻が走ったような気がした。この憎たらしい声、聞いただけで殺意が沸く。

「クソサドォ?!」
「助けにきてやったヒーローに対してクソとは何でィ。クソとは」

誰も助けてくれとは言っていないが、と口に出して言うと本当に放って行く男なので黙っておいた。

沖田は脇差を懐から出し、神楽を縛る縄を切った。気絶している男から鍵を取り鉄の拘束具を外す。

「んーっ!自由はやっぱ良いアルナ!」

…とは言っても気がついて、少ししかたっていないが、番傘を手に取り背伸びをして肩を鳴らした。

「あぁ!!」

神楽は最初に出会った爽やかな男を思い出して思わず声を上げる。
アイツは最初から自分を捕まえるつもりだったのかと思うと怒りで傘を持つ手が震えてきた。

「あんの花咲か兄ちゃん!!許さないネ!!」
「何?それ?」

他の人の拘束を解いていた沖田が白い目で見てきた。

何か言う度に花ばかり咲かせていたから「花咲か兄ちゃん」だ、文句あるか?


「…何手伝えば良いアルカ?」

一応助けてもらったのだから仕方なく聞いてやる。神楽は傘を肩に担ぎ亜麻色を見た。

「あぁ、一緒に暴れてくれたら良いでさァ」
「はぁ」

淡々と話す沖田に神楽は曖昧な返事をする。
大体ここはどこなんだ、神楽は辺りを見渡した。

「いたぞっ!!」

先程逃げた見張りの者が助けを呼んだのだろう、男達が部屋に飛び込んできた。

「来やしたぜィ。適当に散らしておいてくれィ。この人達逃がしてきまさァ」
「言い方が適当すぎるネ」

六人か、先程沖田が三人を倒した同じ時間内で倒してやる。

神楽はニヤリと笑い床を蹴った。





「…ふん」

倒れている男達を見て鼻を鳴らす。

まぁ…同じぐらいの早さだったのではないだろうか、負けてはない筈だ。

何となく手に持っていた愛用の番傘を見つめる。


この番傘を持って戦う亜麻色が自分の兄と姿が被っていた。白い布が姿を隠し、身長が同じぐらいだからだろうか。

それとも――、


「オイ」

後ろから声がし、神楽はハッと弾かれたように顔を上げる。

「次行くぜィ」
「え?捕まった人を逃がすだけじゃないアルカ?」
「メインステージが残ってまさァ」

目を丸くする神楽に白い布の下から沖田が口元を上げ笑った。






何が書きたかったかと言うと、沖田に番傘で戦ってほしかっただけなんです。

それ以外に何もないんです。


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