小説 1

クサノオウ 9

「ありがとうございましたー」と店員の声と共にコンビニの自動ドアが開く。


「いやぁ、悪いね。おごらせちゃって」

ジャンプ、いちご牛乳、その他菓子類五点、銀時の分を支払った山崎は「気にしないで下さい」と笑った。

情報を教えてもらったんだ、これぐらいどうって事ない、と財布の中身を見ながら自分に言い聞かせる。

外はもうすっかり日が落ち暗くなっていた。

「ずっと運転してたら肩凝っちゃってね。ジミー君も今から帰るの?」

銀時は肩を鳴らしながら山崎を見る。

「いや、まだです」
「へぇー、働き者」

コンビニの前で銀時は袋をあさりチョコレートを一枚取り出した。

「疲れた時には甘いものだよね」
「果物や天然系の糖分の方が良いって言われますけどね」
「天然系の糖分?あぁ、天然パーマの糖分好き。坂田銀時のキャッチフレーズ」
「天然パーマの糖尿病寸前が性懲りもなく糖分を取る男っていう事じゃなかったのですか?」
「…ジミー君って結構毒舌だね」

銀髪をボリボリと掻きながらチョコレートをかじる。

「あの…何で分かったんですか?」

山崎は何の事かは言わず隣にいる銀髪に問う。今後の変装の肥やしとなればと思った。

「ん?んー…癖」
「癖?」

自分に癖などあっただろうか、隣にいる男の髪と自分の髪は癖があるが。

「忍び込むのに足音出しちゃあダメっしょ?普段も無意識の内に出ちゃうんだね」
「なるほど」

職業病か、気を付けなきゃなぁと思っていると「そういえば」と銀時が山崎の方を見る。

「神楽が蹴破った戸どうなった?」
「放置です」
「え」

一瞬で元に戻せる訳がない。セキュリティーを付けていなかったから荒らされたというような感じにして帰ってきた。

「あ、依頼人は天人だったぜ。最初見たとき子供かと思った。何か人間と比べて成長が早く止まる種族らしい。俺のような素性の分からない男に頼むわ箱は軽すぎるわ…どうせ中身は薬だろ?」

何も聞いていないのに勝手にしゃべり出した銀時に山崎は目を丸くする。

「何で教えてくれるんですか?」
「またおごってもらう為」

ニヤリと笑う銀時に山崎は心底嫌そうな顔をした。




銀時と別れた後、山崎は紙に記された住所へ足を運ぶ。

歌舞伎町から少し離れた場所に大きな屋敷があった。
近くの大木の枝に乗り辺りを見渡す。屋敷の近くに川が流れていた。

「?」

何かあったのだろうか、屋敷内から罵声が聞こえ頻繁に人が出入りしていた。会話を聞こうと山崎は耳をすます。

「黄琥組の奴等舐めやがって」
「やりやしょうぜ」
「いつ」

仲間が他の組にやられたから仕返ししようぜ、という話か。

ふぅ、と息を吐き頭を掻く。
自分とは関係ないとはいえ、こんなに警戒している屋敷には潜入できない。

山崎は隣の木に飛び移り屋敷から離れると地に降りて屯所へ戻った。







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