小説 1

遊んで強くなろう 3

数分後、互いに二、三名当たり外に出る。幸いまだ死者は出ていない。

「ここで一気に三人程アウトにするぜィ」

沖田はどこからともなくバズーカを取り出した。この行動にはさすがに永倉チームも「え」と目を丸くする。

ボールを宙に投げ、それにバズーカの銃口を向けた。

「発射ァァァ!!!」

バズーカの引き金が引かれ爆音が鳴り響いた。空砲だったらしく弾は出ないが、弾の代わりにボールが空砲に押され超剛速球で永倉達を襲う。

「ぐはぁぁ!!」

沖田の言葉通り三人の隊士を薙ぎ倒し、さらに立っていた木を貫通して岩にめり込んだ。ドォンという音と共に木が地面に叩きつけられる。穴が空いた岩からは白煙が立ち上っていた。


――とうとう死者が出たか?


山崎は青ざめて倒れたまま動かない隊士達を見た。

「…こんのやろ…やりやがったな…!」

永倉がバズーカを担ぎ口笛を吹いている沖田を睨む。

倒れている三人は外へ運び出された。息はあるらしい。




「右之、連鎖だ」
「ラジャー」

再び永倉チームにボールが渡った。

あの凸凹コンビ何やる気だ、嫌な予感しかしない。

山崎の頬に嫌な汗が流れ落ちる。


原田がコートの一番後ろにまで下がり、両手でボールを持ち振りかぶった。捲り上げた袖から出ている太い腕には血管が浮き出ている。

「どぉりゃあぁぁ!!!!」

原田の気合の叫びと共にボールが宙に放たれた。丸い球は楕円形に変化し唸りを上げ風を切る。それに永倉がどこから出してきたのかスプレーを向け、その発射口の前でライターに火を付けた。

スプレーが火炎放射器のようになる。火が迸りボールが炎に包まれた。


――ちょっと待てぃ


山崎だけではなく隊長三人組以外誰もが心の中で突っ込んだ。

「チッ!神山ァ!!おめぇの出番だ!!」
「イエッサー!!」

沖田の声に敬礼し、恐れもせず火の粉をまき散らしながら向かってくるボールの前に立った。両手を使ってそれを受け止める。

「うおおぉぉぉ!!!!!」

しかし勢いは収まらず容赦なく神山に襲いかかる。足に力を入れ踏ん張るが耐えきれず吹き飛ばされた。

「ぐはぁ!!」

吹き飛ぶ神山に巻き込まれ二人の隊士が外へ放り出された。土煙を上げ地面を滑る。

炎に包まれたボールは神山の元から離れ地面に転がると灰となり形を失った。その場に火だけがメラメラと燃える。


「…どこの格闘スポーツ漫画ですか?」

山崎はここに来た事を心底後悔した。






ついには刃物まで飛び交うボールの投げ合いを土方は紫煙を吹かしながら見ていた。

「武州の頃から無茶苦茶だったが…更に進化したな」
「遊びの中からでも学ぶものはある、俺も参戦しよっかな」

土方と一緒に見ていた近藤は肩を鳴らし腕まくりをする。

「止めてくれ、これ以上俺に仕事を増やさないでくれるか?近藤さん」

もうすでに庭は無茶苦茶だ。はしゃぎすぎるのも限度があるだろ、土方は盛大に溜め息を吐いた。






ドッジボール。

恐ろしい球技だよ…


お金の単価とか気にしないで下さい。〇両かな。


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