小説 1

一度気になりだしたら止まらない1

(ALL)


「凹助、風呂いかねぇの?」

ハゲ頭から湯気をだしながら八番隊隊長の部屋に入る。
胡座をかき新聞を読んでいた藤堂は顔を上げ原田を見た。

「あ?あぁ、後で入る」
「……」
「な、何?俺の顔に何かついてる?」

黙ってジッとこちらを見てくる原田に藤堂は引きながら自分の顔を触る。

「いや、永倉が不思議がってたぞ。何であいつはバンダナ取らないんだって」
「は?…またそんなつまらん事…」

怪訝そうな顔をし再び新聞に目を落とした。

「武州にいる時から着けてるよなぁ。いっぺん取ってみろよ」
「うわっ!」

バンダナを外そうと藤堂の頭に手を近づけたが間一髪避けられた。新聞がグシャと音をたて床に押しつけられる。

「何するんだ!ハゲ!」
「何…って、バンダナ外す」
「何で?!」
「別に減るもんじゃないだ…ろっ!」

言い終わると同時にまたバンダナを取ろうとする…が、またしても失敗。
藤堂は立ち上がり原田を睨みつけた。

「俺のライフゲージが減る」
「何それ?体の一部?」

ジリジリと迫る原田。
後退りをする藤堂。

「……」
「……」

2人の間に沈黙が流れる。
僅かな隙を探す原田に気を張る藤堂。2人の顔は真剣そのものだが、たかがバンダナにこれほど張り詰めた空気になるのはどうしてなのか。


「…?」

廊下の方で誰かがこちらへ向かってくる足音に気づき藤堂が一瞬襖の方を見た。
その隙を見逃さなかった原田が藤堂に飛びかかる。

「…おりゃあ!」
「!!」
「藤堂入るぞ。昨日の討ち入りの報告書の事だ…が………何をしてる…」

紙を手にし煙草をくわえた土方が目にしたのは、藤堂の上に原田が覆い被さる感じになっている様だった。

「……いや、まぁ…別に止めはしないが…屯所内では止めとけ。他の隊士に示しがつか」
「違っ!何勘違いしてるんだ!副長!」

そう叫ぶと原田は藤堂の体から離れる。
焦るハゲ頭に藤堂は何か思いついたのかニヤリと笑い自分の体を両手で抱え込み少し高めの声色を出す。

「いやぁーハゲに犯されるー」
「こらぁ!凹助!!」







戻る

- ナノ -