小説 1

アナタがいないなんて有り得ない2

本日十数本目の煙草を取り出す。

これでコイツまで消えたら俺も消える。何があなたの健康を損なう危険性だ、その健康と引き替えに税金払ってやってんだ、喫煙者こそ国の為に役立ってんじゃねーか?

そう思いながら土方は煙草にマヨライターで火を付けた。

「…」

煙草を口に加えたまま火がついたマヨライターを見つめる。

このマヨライター食べれるような気がしてきた。実はこれ、火に見えてマヨネーズじゃね?あぁ、きっとそうだ。ほら赤からクリーム色に見えてきた。これはマヨネーズを愛するものにしか見えないマヨネーズなんだ。びば、マヨネーズ。でぃすいずあマヨネーズ。俺の目の前をほとばしるマヨネーズ、やっと会えた。

土方は煙草を口から離し、マヨライターを口に入れようとした。


「土方ァァァ!!!!」


ドォォーーン!!!!!


突如爆発音と共に土方の体が吹っ飛ぶ。溜まりに溜まった書類が舞い、白煙が立ち上った。
そこへバズーカを担いだ沖田が飛び込んでくる。ゆらりと土方がゆっくり立ち上がった。

「土方さんアンタ」
「総悟ォォォ!!!!てめぇのせいで俺のマヨネーズが消えちまったじゃねーかァァァ!!!どぉしてくれるんだァァ!!!」
「あれ、やっぱり副長の仕業だったんですか?」

青筋を立てて沖田の胸ぐらを掴む土方に後から入ってきた山崎が言う。

「あぁっ??!!」

ギロリと鬼の副長が山崎を睨んだ。

「い、いや、えっと」
「アンタいつの間にあんな技覚えたんです?」

怯えて焦る山崎に変わり胸ぐらを掴まれている沖田が問う。

「はぁ?!技?!」
「マヨネーズが消えたんですよ、副長がやったんじゃなかったのか?」

怪訝な顔で怒鳴る土方に山崎の隣に来た原田が眉をひそめた。

「ついさっきコイツが消したが」

土方は掴んでいる胸ぐらを揺らしながら原田に言う。沖田の体が前後にぐらぐらと揺れた。自分を指差し「俺?」と呟く。

「いや、そうじゃなくてですね。先程食堂でね」

明らかに違う事を言っている土方に山崎が食堂で起こった事を話し始めた。






「は?…で、ドロンと消えたってか」
「えぇ、もうヌンジャハットリ君のようだったでさァ」

目を丸くする土方に沖田が肩を竦める。
屯所内にあった386本のマヨネーズも江戸中のマヨネーズもそんな消え方をしたというのか、土方は顎に手を当て考えた。

「気味悪ぃなぁ」
「一度工場へ足を運んでみましょうか?」

顔をしかめる原田の隣で山崎が土方に聞いた。

「そうだな、そいつが手っ取り早い」
「マヨネーズひとつにそんな必死になるこたァ…そういや、さっき土方さんはマヨネーズを見たような口振りでしたが?」

沖田が首を傾げて土方に問う。

「あぁ、このマヨライターからマヨネーズがほとばしっていたんだ」
「…」

無表情でマヨライターを手に言う土方に三人はしばし沈黙した。

「…土方さん、もういっぺんそのライターつけてくだせェ」
「あ、あぁ」

土方は手にしていたマヨライターのフリントを親指で回した。ジュポッという音を立て火が出る。

「…火、ですよねィ?」
「当たり前だ。ライターだから火が出る。ごく自然な事じゃねーか?」

この人から半日でもマヨネーズを取ったらこうなるのか、若干虚ろな目でいる真選組副長を見て三人は段々と事の重大さが身に染みてきた。







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