小説 1

死ぬ気でかかれば良い

(土方)


「三番隊がきてます」
「…斉藤が来たか」

山崎の報告に土方は腕を組み呟く。
総悟が来ると思ったのだが…さて二木の隊がどれだけ保つか。


今、真選組は荒野一体を使っての大規模な訓練をしている。内容は紅白に分かれて互いの陣地にある旗を取った方が勝ち。

紅組の陣地にある小屋の中で土方と武田は作戦を練っていた。

「八番隊を先にしてその間にこの辺りから二番隊が攻め込めば良いんじゃないかしら。この建物がちょうど死角になるのよねー」

武田が机にある地図をペンで指す。土方は黒髪を掻き「あー…」と呟くと、

「だったら八番隊と一緒に別の隊も出さないか?」
「あら?相変わらず用心深いわねぇ」

瞬きをし、ペンで自分の頬をトントンと叩いた。土方は煙草を口から離しフーと紫煙を吐く。

「たぶん相手の指揮は近藤さんだ。あの人なら回りくどい事はしない。真っ直ぐ進んでくる筈」
「ここの守りが薄くなるわよ?」
「こっちに来る前に旗を取れば良い」

土方の言葉を聞いて永倉は「ゲッ」と、嫌な顔をした。

「慎重なのか大胆なのか…」

木刀で肩を叩きながら顔を歪める。土方はそんな永倉に「あっちはお前が来る事は予想済みだ」と言いニヤリと笑った。

「恐らく総悟一人で守っている筈だ。他の者全員で攻め込んで来るだろうから四番隊、八番隊で力を分散させろ。その間に二番隊がここを抜けて…」

土方はそう言うと永倉の方を向いて地図を指差す。

「ここまで来たらお前だけで取りに行け」
「他は?」
「引き返して挟み撃ちにしろ。逆からも五番隊に行かす」

永倉は「へぇ…」と目を丸くしながら地図を見た。

「ただこっちは死角らしい死角がない。山崎が五番隊の補佐をしろ」
「それじゃあここは副長一人で守るんですか?」

山崎が顎に手をやりながら首を傾げた。

「いや、空にする」
「は?!」
「全員潰しゃあ良いんだ。お前等が取りこぼした者は俺が始末する」

土方は立ち上がると木刀を持ち肩を鳴らした。


「俺が一人相手するごとに報酬の金が減ると思え」


ニヤリと笑う鬼の副長を前にして隊士全員の顔がひきつった。


…なんていう訓練があれば良いと思う。

隊員同士が本気でぶつかり合うって萌える(*´д`)


戻る

- ナノ -