小説 2

4がつ1にち(はれ)8

『いいから帰って来て下さい!!このままじゃ屯所が潰されギャアァァ!!!!』

凄まじい破壊音と怒号であまり聞こえなかったが、そう言っていたような気がした。

あれから沖田は神楽の腹にある風船を割った。それが試合開始のコングとなって市中での喧嘩が勃発。その喧嘩の最中に山崎からの電話を受けた。


屯所に戻ると有無も言わさず山崎に客室まで連れて行かれる。部屋に入る際、開ける必要がない程に襖が粉砕されており、沖田は木クズを踏みしめながら部屋の中に入った。
中では、先程神楽との一戦よりも激しい戦いが繰り広げられており、元々どんな客室内であったかも思い出せない程、原型をとどめていなかった。

「一体なんですかィ?」

沖田はその破壊を行っている張本人達を見た。木の棒を二刀流している銀時と抜き身の刀を振り上げている土方が勢いよく沖田の方を見遣る。

「てんめぇ!!どこほつきあるいていたァ?!」

土方が怒鳴り声を上げたが、沖田は「は?」といった感じに眉を寄せた。

「どこって…仕事、見廻り、市中巡回」
「ようやく来たか…沖田君。俺に何か言うことない?」

青筋を浮かべた銀時が土方を押し退けて沖田に近付いてくる。沖田は腕を組み「うーん」と唸った。

「…あ、三丁目のスーパーで夕方のタイムセールいちご牛乳一本三十円」
「マジで?!夕方のタイムセールっつーと…げっ?!後一時間しかねぇじゃん!!…って違うわァァァ!!!!」

銀時は唾を飛ばしながら叫び声を上げた。沖田は短く息を吐いて困ったように首の後ろを掻く。

「じゃあなんでさァ?分かんねェ」
「え?何?こんなこと銀さんの口から言わせるわけ?ねぇ?」

周りに数個の青筋を飛ばしながら銀時は沖田の胸倉を掴んだ。

「あのぉ…沖田さん。部外者の俺が口出すのも何ですが…ここは男としてちゃんと言った方が…」

沖田の隣にいた山崎が遠慮がちに言う。

「総悟。これは父親になる男誰しもが通る道なんだ。武士たる者、けじめはちゃんと付けなければならないぞ」

無茶苦茶な部屋内で胡座を掻いている近藤は腕を組み、真剣な面持ちで沖田に言った。

「へ?父親?いや、マジで訳分かんねぇんだけど」

何か分からない話が勝手に進んでいる。
自分だけ別次元にいるようだ、と沖田は思った。


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