小説 2

4がつ1にち(はれ)6

春うららかな日和の中、通りでは子供達が砂道に絵を描きながら遊んでいる。その横を沖田は口から大きな欠伸を出しながら歩いていた。
眠気が来ては仕事が出来ぬ、無理矢理作った文句を胸に沖田は一眠りしようかと公園に向かっていた。すると前方から番傘をくるくる回しながら歩いて来る見知った顔、神楽の姿が見えたものだから自然と顔が歪む。

「あ」

相手も沖田に気付いたようで、桃色の前髪を風に揺らせながら口を開けた。

「…拾い食いし過ぎだろ」
「どこをどう見たらそう思うネ」
「だって」

沖田は神楽の腹を指差した。そこにはチャイナ服がはちきれんばかりにぷっくりと膨れた腹、神楽は「あぁ…」と面白くなさそうに口をへの字にまげながらその腹をさすった。

「なんでオマエ見廻りなんかしてるネ?つまらないアル」
「何が」

意味の分からない文句を言われ、沖田はピシリと青筋を立てる。同じく不機嫌そうな神楽は「チッ!」と舌打ちをしてそっぽ向いた。

「この腹で屯所に行ってやろうと思ったのに」
「食い逃げの自首に?」
「違うわボケ」
「じゃ何その腹」

沖田はぷっくりと膨れた神楽の腹に触れた。チャイナ服の生地越しに空気が張ったような感触が伝わってくる。

「風船?」
「そうアル」
「…一個では飛ばないと思うぜ」
「空を飛ぼうとかそんなメルヘンなこと思ってないわボケ」

神楽は腹を抱えながら沖田を見上げた。

「赤ちゃんができたって銀ちゃんに嘘ついたアル。腹をでかくすればもっと真実味が食べれるとは思わないカ?」
「…」

‘食べれる’ではなく‘出てくる’ではないのかとかそんな突っ込みをする前に、自分はコイツと同じ思考だったのかというショックが沖田の口を閉ざさせた。

ザッザッザッ――と、砂道を駆け走る音がする。二人の横を飛脚が足早に通り過ぎて行った。


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