小説 2

4がつ1にち(はれ)5

刀傷だらけの壁や畳、裂かれた掛け軸…これらの請求書は後程作るとし、土方は目の前の銀髪の男を見据えた。

「今総悟は見廻り中だ。つーかよ病院で診てもらってから、んな事言ってんだろうな?」
「産婦人科なんぞに行かせれるか。知らん男にデリケートな部分を晒せってか」
「それが相手の仕事だろ馬鹿」
「あぁっ?!」

土方と銀時の間で火花が散る。一触即発の二人から出る凍てつく風に吹かれ、近藤と山崎は顔をひきつらせていた。

「あ、あのー…一度沖田さんを呼んできたらどうですかね?俺らがあぁだこぅだ言うよりィィイイィィィ??!!」

山崎の真横を超高速で刀が通り過ぎていった。壁に突き刺さり柄が微妙に揺れる。その鋭利な刃物より数段斬れ味が良さそうな土方の眼力が空気を裂き、青ざめている山崎を貫いた。

「黙れ」

山崎は必死に何度も頭を上下に振る。
近藤は「まぁまぁ」と銀時と土方を落ち着かせるように両手を前に出した。

「な、何がともあれめでたい事じゃないか!若い二人にィィイイィィィ??!!」

近藤の真横を超高速で刀が通り過ぎていった。その背後にあった壷が真っ二つに割れ、刀が床の間に突き刺さる。闇夜に走る閃光のような銀時の眼光が青ざめた近藤を射た。

「黙れ」

近藤は必死に何度も頭を上下に振る。
銀時は座り直し、机に肘を突きながらトントンと人差し指で机を叩いた。

「まぁ?こちらも多少なりとも非はあるかもしれねぇけどさ、こういうのって結局苦労すんのは女の方なわけよ。まだまだガキんちょの少女に手ぇつけちゃった責任は取ってくれるのかね」

「だから本人を呼べば」と、ブツブツ文句を言う監察をひと殴りした土方はある事を疑問に思った。

「…チャイナ娘って歳いくつだ?」
「14」

部屋内の時が一瞬止まった。土方が持つ煙草の紫煙すら宙に溶けず、固まった空気に張り付いている。


――ホーホケキョ


いい加減、場の雰囲気に合わせて鳴くあのうぐいすを焼き鳥にでもしてやろうかと土方は思った。

「まさに子供が子供を産む…ですね」

殴られた箇所を撫でながら山崎はボソリと呟いた。


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