小説 2

4がつ1にち(はれ)2

「おたくのお子さんをだしてもらおうか」

いつもの木でできた刀ではなく、鋼色を閃かせた立派な真剣を肩に担いで屯所に乗り込んできた男はそう言った。
廃刀令が下されたこの御時世に堂々と違法物を警察に持ち込んでくるとはいい度胸だ、逮捕だ、切腹だ――こめかみに青筋を浮かべながら土方は男に食ってかかろうと口を開きかけた。
だが、自分の青筋の数より数倍の量を顔に浮かべている銀髪がストレートに投げつけてきた話の内容を受け、発しようとした言葉の代わりに加えていた煙草がポロリと落ちる。


――ホーホケキョ


思考が止まった脳の中でうぐいすの鳴き声がやけに響いてきた。

「…は?」

やっとこさ出た言葉は泣く子も更に泣く鬼の副長とは思えない程の間抜けな声。
銀髪の男――坂田銀時は肩に担ぐ刀を今にも振り下ろさんばかりの形相で土方を見据えている。

「どう責任取ってくれるのかなぁ?若気の至りじゃあすまないよ」
「いや、待て待て…」

土方は二本の指で眉間を押さえながら止まった思考回路を正常に戻そうと瞑目した。


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