小説

- 異なる想い、異なる道 -





――藤堂だけは斬りたくねぇなぁ…



本庁から帰ってきた土方が、誰に言うわけでもなく、宙を見つめながらボソリと呟いた。

――え?

彼の口から出るとは思わなかった言葉に、思わず聞き返してしまった。
すると、彼はこう付け加えた。


――俺じゃねぇよ。近藤さんがそう言ってたんだ。




「凹助だけは残ってくんねェか?」

もうすっかり寂れてしまった公園に二人、亜麻色の髪が静かな風に揺らされる。
前置き無く、ただ一言だけ放った。それだけでも、このバンダナ頭の青年には通じたらしく、困ったように眉尻を下げる。

「…ごめん」

彼も同じく、ただ一言だけを返してきた。

「何で…っ!凹助まで行くこたぁねェ!頭イカれてる幕府を討つなんざ隊に居たって」
「ちょ!馬鹿ッ!しーっ!!」

藤堂が慌てて沖田の口を塞ぎ、辺りを見回した。

「んな事大声で言う奴がいるか…!」
「だって…」

少し怒った口調で言う藤堂に対して、沖田は俯き言葉を詰まらせた。

隊から離れれば、必ずや近い内に自分達と剣を交じり合わす事になる――それだけは避けたい。
藤堂といつも一緒だったあの二人も必死だ。永倉は毎日、足が棒になるまで解決策を探し回っている。原田は事に寄っては隊を抜けるつもりでいるらしい。


沖田が黙って俯いていると、藤堂はその頭の上に手を置いた。いつも何かと心配し、向けてくる暖かい目。その目で、亜麻色の前髪に隠れた顔を覗き込みながら言った。

「お前に斬られるような事があっても、俺は最期まで、正義感いっぱいの優しいお前が好きだよ」

その言葉を聞き、沖田は俯いたまま目を見開く。

「勝手、すぎるんでィ…んなの…っ!」

そこから溢れてくる涙を抑える術など持ってはいなかった。


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七条油小路のあれを少し変わった形で真選組ver.

幕府が今より無茶苦茶し出し嫌になった真選組のある人物(伊東ではないが伊東のような人物)が何名かの隊士連れて幕府を討つ組織を結成。その隊士の中に藤堂が入っている。…というそれこそ無茶苦茶だよっというもう意味の分からない設定。
で、幕府がその事を嗅ぎ付けてそんな奴等討ってしまえという命令を出したという。


ある新撰組の小説を読み書きたくなりました…が、気分が暗くなるだけでした。

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