俺はこの頭ぶっ飛んでる奴と居て何したいんだろうか。それはいろんな奴から言われる。変な目で見られる。かっこいい奴なら、好きだから、とかあいつは変じゃない、とか言えるんだろうなと、平凡で波風をたてたくない自分としては「わかんね」。これに尽きる。なんでなんだろうか。あいつと一緒にいると、メール代と電話代が死んでくからパケ放に入る羽目になったし、帰りは寄り道ばっかりだから遅くなるし、勿論相手にしたくないときだってある。あいつはなんなんだろうか。
休み時間の3分ほどをあの椎名という女に、使ってしまった。ふと顔を見上げると、いかにも軽薄そうな、中の真っ赤な服が薄く透けている男子が立っていた。こいつはあまり、良い話はしない。する話はセックスがどうとか胸がどうとかあいつはキモイとか、そんな下衆な話だ。嫌いではないのだけど。

「お前さ、あの椎名って奴と付き合ってんの?」

げらげら、周りの笑いに俺もつられた。薄ら笑い。はあ?とにやついてやる。上手く溶け込む方法は最近身についた。こんな方法は、死ぬ程嫌いだった。

「そんな訳ねえじゃん」
「だよなぁー!じゃあさ、なんでいっつも一緒に帰ってるわけ?あいつキチガイじゃん。いつも歌ってるしさぁ、マジでやばくね?」

あーあ、と思う。嫌われてるんだなあと心中頭を抱えた。なんでかな。前はそんなに嫌われてなくて、むしろ好かれてたと思うんだけど。あいつが悪いことはしてないと思う。俺以外には。ちょっと人より変わってて、仲の良くない他人に笑いかけない、そういう奴なんだけど。可哀想だな、いつも思う。もっと、器用だったらこんなことにはならなかったのに。馬鹿だなあ。

「ほんと、なんでだろうなー。俺にもわかんねえよ。っていうかおれが聞きたい位だわ」

薄ら笑い。気に入ってもらえるような声と笑い方。これで満足だろ?お前らが好きなのは普通で、器用で悪知恵の働く、世の中の手本だろう?
案の定取り巻きとその下衆男は笑って人気の女子の所へ行った。もう少しマシな神経になってくれ。一応、毎日一緒にいるわけだからさ、俺は。でもそれでも俺は話しかけられる部類だった。日本史の教科書とか何かを持って、クラスの力のある奴と一緒に準備室へ。はは、と軽く笑っといた。俺はあいつと違う。コミュニケーションも、笑顔も、全部できてしまう。俺は社会に殺されたくはなかったから。一通メールが届いた。誰からなんて決まってる。でも見てやる。今日は29通目。なんだか少なめだ。中身は、「三嶋の笑顔120円」だそうです。思わずふん、と鼻で笑ってしまって、10点だなって思った。そうしたら隣の人気者が、誰からだよと笑う。

「ミスドから」

今日はミスドに行こうかな、と思った。



うつくしいだけでは手に入らない
それが現実であり真実であるが、それだけでは決して無いという事を教えておこうか。
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