あーあ、この国はお終いだ。
脇腹のもうすこうし上のあたりでぱっくり傷口がコンニチハしている。コンニチハ。今日も今日とてテロリストさんはご苦労なことです。あ、コンニチハ。またまたガスマスクなんかしちゃってぇ。それってどういう意味ですか?もしかしてこの地域にそういうもの垂れ流しますよってことですか?ん?

「汚らわしい血に粛清を!」

うるせぇよ、ハゲ。黒い防弾プラスチックの奥から除く、生に塗れる瞳が俺を捉えた。その瞳は、生気に満ち溢れていた。こういう人間こそ恐ろしい。曖昧な希望の元で躍起になるのは、まるで宗教のようでいただけない。そして無視だ。はいはい、俺はこの国じゃ関係ない人間ですからね。ただの内通者ってだけで、はたからみたって見たことあらぬ異邦人ってとこなんだろう。すいませんね、邪魔しちゃって。じゃあもう自国で解決してくれよ、何で俺がこんな所に来なきゃいけねーんだよ。イライラとジクジクに翻弄されつつ座り込む。あーいてー。依頼したのは護民官じゃねーかなんで時間通りに来ないんだよそれでも正義のヒトかよ。あ、でもそうするとこいつらテロリストも正義か。ん?もうなんだって良くなってきたぞ?

「おい、そこのお前!」

あれ、ボクのことですか。いやあのちょっと血液足りなくて困ってるんで構わないで頂きたい。ほんと。いやマジで。ガスマスクなテロリストさん。コンニチハ?ハーワーユー?ワーオ機関銃リアリィリアル。オーノー集団リンチダメ絶対。

「どこの人間だ」
「待て、こいつ異人だ」
「護民官共にでも尻尾ふってついてきてるのかもしれないな」
「一応殺しとけ」

そういう一応とか凄く悲しくなるからやめて頂きたいわー。
そうしてテロリストの奴の一人がわりと小型の銃で俺の頭に照準する。ああサヨナラ俺の人生。コンニチハ銃弾。

パアン!

随分と、派手な音だった。空気が震えた。テロリストの生に執着する瞳は血に染まった。倒れてゆくガスマスク。ばたり。あれ、俺じゃない。エ?何でお前なの?
パァン。再び銃声音。またガスマスクが倒れる。ようやくここでガスマスク達はハッと気づいて護民官か!?とかどこだ!とか急に慌て出す。俺は無視ですかそうですか。パアン。パーン。全てヘッドショットだったことは、今更になって気づいた。
今まで銃弾の落ちる音とか、硝煙でわからなかったが、何処からかバカにしているようで、切に願っている気もする。バカバカしいのに愛おしい。狂おしい。そんな歌。何処からか、歌が聞こえるのだ。

「こーんにちはーこーんにちはー世界のーふふふんふーん」

歌のチョイス。
パアン。最後に喚き散らしていたテロリストは地に落ちた。俺は、とにかくコンニチハに夢中で、何にも動けなかったのだ。

「コンニチハ、トウ。我等が国にようこそ。僕が貴方を護民官本部に招待します」

るらるらと歌いながら、廃屋からのらのらと現れたのは不思議なガスマスク。片目だけは覆っていないガスマスク。彼もガスマスク。こんにちは、ガスマスク。

「…俺はトウじゃない、アズマだ」
「すみませんトウ、我等が言語でアジュ…アズマは言いにくいのです」

さあ、と微笑みかけられた。立ってくださいと手を差し伸ばされる。立とうとするが、痛みで立ち上がれない。

「すまん、ちょっと怪我して」
「それは困りました、これから手伝ってもらおうと思ったのに」

え?と思うと、奴は、大ぶりなライフルを大っぴらに見せている片目に当てがい、そして引き金をひいた。ぱあん。

「私、こんな武器しか扱えないので、私の護衛を頼みます」

コンニチハ不条理


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