崩壊+起点



Nと別れてから私は一人で自分の部屋へと戻るべく、
長い廊下をまたぺたぺたと歩いていた。
この城が完成したのはいつなんだろう。
確かに豪華絢爛の極みだが広すぎる廊下にある
レンガは所々崩れ落ちたりなどしているのに歩いていて気がついた。
今ではすっかり思い出した夢の内容をもう一度頭の中に描く。
夢の片隅に聞いた悲痛な叫びはポケモンの叫び。振り向いたのはN。
これで全て納得がいく。そう思っていたら部屋についた。
疲労のせいか千鳥足で部屋の中へ入って行き、
やはり広すぎるベッドにぼすんと飛び込むと私はそのまま眠った。

次の朝はNの私の部屋のドアを勢いよくあける音で目が覚めた。

「ナデシコ!大変だ!」

Nは相当焦っているようで走ってきたのか息を切らしている。
うとうとしている場合ではない、私は慌てて飛び起きた。

「N、そんな息を切らしてどうしたの?」

「今から城を崩すって!」

Nが吐き出した言葉はとても衝撃的だった。

「城を崩す!?」

思わず私まで気が動転してしまいそうだった。
今から崩すってNや私はどうなるんだ、って普通なら思う。

「誰がそんなこと…。」

「ゲーチスだよ!」

確かNの側近みたいな、七賢者の中の一人だったか。
脳内は声帯よりもパニック状態だったようでうまく思い出せない。

「さあ、急いで今から荷物をまとめるんだ、ナデシコ!」

「Nは荷物無いの?」

Nは手ぶら、しいて言えば持ち物は手持ちのモンスターボールなど
ポケモントレーナーの必需品くらいだった。

「大丈夫 ボクはどうとでもなるから早く!」

そんなこといったって、私だってほとんど荷物は無い。
少しの荷物を抱えてNと一緒に廊下を駆けてって、
丁度城から出た直後城は大きな音を立ててがらがらと崩れ落ちていった。

…これでプラズマ団は全て終わるんだ。
そう思うと私はとんでもない歴史的瞬間を体験したのかもしれない。
七賢者はどこかへと行方をくらましたとNは言った。

「N、これからどうするの?」

私がNの方を見るとなんとも考えてないというような顔をしていた。

「どうしようか…帰り先も今無くなっちゃったし。」

困ったようにNはハハと笑う。

「じゃあ、私の所で暮らせばいいじゃん。」

と私が言うとNが目を丸くしながらこっちを体ごと振り返った。

「いいの?」

「うん…Nさえよければ一人で暮らしててもさみしいだけだし。」

私の気持ちとともなってムンナも嬉しそうにむぅんと鳴く。

「キミも嬉しいんだね、ムンナ……じゃあ、お世話になっちゃおうかな。」

「それがいいよ! じゃあゼクロムに乗っけてもらえる?」

「勿論。」

Nがゼクロムを出して、私達を乗っけた。
もうあんな豪華絢爛な物を見ることもできないし、
過去を塗り変えることもできない。
でも、Nと私はこれから一緒に暮らす。夢のつづきを描いていける。
ぼんやりと思いながらNの後姿を見つめていると、
タマゴが小さくかたりと揺れた気がした。