コトノハ。 | ナノ


▼チョウセンシャ。


コーンside。

ここはサンヨウシティのジム。
今日も僕らは忙しい。
ジムとレストランを同時にするとなると、どうしても昼時は大変なのだ。

昼頃大体客の出入りも落ち着いてきた頃に1人の少女が入ってきた。
…と思ったらカーペットに足を引っ掛けたのか、派手に転んでごろごろと転がった。

「お客様…大丈夫ですか!?」

僕が早歩きで近づくと(レストランで走ってはいけないのだ)
その少女は

「…す、すみませんっ!」

と立ち上がろうとしたが今度はなぜかモンスターボールが彼女の腰からぼとぼとと落ちて来た。
僕はさらに慌てる彼女のボール拾いを手伝う。

「ありがとう、ございます…。」

ボールを手に乗っけてやると、
2重のドジですっかり店内の注目を集めた彼女の頬が真っ赤に染まっているのが見えた。

「いえいえ、平気ですよ。」

笑いを堪えるのに必死になっているポッドを、本人だけに分かるように睨みつける。

しかし僕は見た。
ボールに入っているポケモンの目は、並じゃない戦いを越えて来た目をしていた。

「……挑戦者の方ですか?」

僕が問いかけると、
彼女は案の定こくり、と頷いた。




「それではただいま支度を整えますので、少しお待ちください。」

席へと彼女をエスコートして僕は、
ポッドの方へと向かいポッドをぐいぐいと裏方の方へ連れ出す。


「いてててててて!なんだよコーン!」

耳を思い切り引っ張ってやると激しくポッドが抵抗した。

「全くお客様を笑うとは何事ですか!失礼ですよ!」

「笑ってねーよ!笑いを堪えてたんだよ!」

「どちらも一緒でしょうが!」

「いきなり人の耳引っ張るやつが言うなよ!」

「…まあ、それもそうですが。
ああそうだポッド、謝罪ついでに彼女の様子を見に行きなさい。」

結局言い争いなのかそうでないのか分からない言い争いは、僕が折れて幕を閉じた。
いつも通りのパターンだ。
ポッドは驚いた様子で、

「おっ!アイツ挑戦するのかー」

と能天気なことを言っている。
ポッドが水を持って去っていった後、僕は密かに溜息を吐いた。