じゃりじゃり。 効果音にするのならまさにそんな感じだった。 真夏の乾いた路をひたすら歩いて行く。吹く風すらも乾いていて、ついでに喉も渇いていた。 唯一と言ってもいいほどの潤いと言えば、左手の中。 わたしは左手に目をやった。そこはトウヤの右手とがっしりと繋がっていた。実際は潤うと言うより汗ばむというべきだけど、潤いは潤いだ。ただし暑い。ものすごく暑い。繋がないで居ていいのなら繋がないでおきたいのだが、
「…トウヤ。」
「何?」
「手外してもいい?」
「駄目。」
暑さでだれているのにも関わらず隣の彼が強情を張って中々離してくれない。普段なら心臓が破裂して中からトウヤへのラブが溢れてきてもまだ足りないぐらい嬉しい出来事なのだけど、なぜ今日の今のタイミングなのか分からない。とにかく暑い、離してほしい。そっちの思いのほうが強かった。 今度は左を向く。トウヤが居る。居る。居る。もうなんか暑すぎてずっと同じ単語をリピートするしか手段が無くなってしまった。何の手段だと聞かれれば即座に意識を保つ手段と答えるだろう。
「……そんなに嫌だ?」
トウヤから不安そうな声が聞こえてくる。喉が渇きすぎてちょっとしゃがれてるのがポイント、ポイント。
「そんなわけ。」
…嘘ついたごめんトウヤ。内心だけで謝る。わたしも喉が渇きすぎて出来ることならなるべくしゃべりたくない。そして手を離してほしいけど離して欲しくない。そもそもと言えばトウヤが歩いてポケセン行こうぜ!なんてはしゃぎはじめるからこうなったのだ。なんで歩いてポケセン行こうぜとか言ったんだバカトウヤ。バカトウ。バトウ。罵倒。なんか違う単語に変わってしまった。
「今嘘吐いただろ、ナマエ。」
「え、嘘。」
分かるんだよ、バーカと吐き捨てそっぽを向いたトウヤの耳が赤い、気がする。これは暑いから赤いのかそれとも、ああポケモンセンターが見えてきた。
- 110528 title:夜風にまたがるニルバーナさま
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