4日目:放課後デート
トウヤ視点

いつも通りひなた達を見送って、一通りの家事を済ませた後昨日の昼ドラの続きを俺は見ていた。この奥さんなんでこんな男と浮気してんだ。明らかB男のほうがいいだろ。イケメンだし、性格いいし。やっぱ金か、金なのか。昨日つくった肉じゃがの残りをほおばって見続けていると画面はCMに切り替わる。時計を見やるともうそろそろドラマの終わる時間だ。次は何やったっけ。驚きの白さがどうたら言ってるCMが終わる。次の番組は若い女子向けの今流行の物を紹介する番組のようだ。安カワ★ショッピングモール…ふーん、ひなたも好きなんだろうな、こういうの。あっちの世界じゃムチュールドール、流行ったなあそういえば。結構前だけど。今の流行はチラーミィのポーチだったはず…なんで女子の流行なんて知ってんだよ俺。次は悩める乙女必見!激カワファッションショーなんてものが画面に映し出される。とりあえずなんでもカワイイとか言っとけば売れるんじゃねえのコレ。…ひなたが好きなら、行ってあげてもいいけど、別に。

「ただいまー。トウヤなに見てんの?」

後ろから聞こえた声に思わず肩を跳ね上がらせる。

「ひなたいつの間に居たんだよ。帰ったらさっさと言えよバカ。」

「バカじゃないですーひなたですー。今帰ってきたんだってば。あ!こんな時間にやってるなんて珍しいじゃんこの番組。このショッピングモール近所にあるんだよ」

ひなたは喋りながら学校のバッグを降ろして辺りを見回した。なにやってんだ。

「あれえ、どこ行ったかな。そこのショッピングモール結構できたてでね、こないだクーポンもらったの。」

「…なあ、ひなた行きたい?」

「別に。」

俺の言葉をあっさりと流したひなたはクーポンを見つけたらしくはしゃいでる。

「ここ行かない?俺暇なんだけど。」

「そんなに行きたいの?トウヤ。」

「べ、別にそんなんじゃねーし!ひなたが行きたいなら別に行ってやっても…とか…その、だな。」

耳がかああと熱くなる。いつからこんなツンデレ体質になったよ、俺。ひなたがクーポンを俺に差し出し、ふうと一つ息を吐いた。

「しょーがない、連れてって差し上げましょう。」

こうして今日の予定は決定した。


「すげ、こっちの世界のショッピングモールってこんな広いんだ。」

「ここは結構大型なんだよー。田舎とかは2階で終わりだったりとかね。」

俺達はショッピングモールに来ている。あそこ何階建てだったっけな、それにしてもここはすごい。広すぎる。

「そんじゃイチオシのアイス屋行きたいな、わたし。」

「アイス…まあいいんじゃねーの。」

俺はひなたの横をひなたのペースにあわせて歩く。アイス屋ってバイバニラとか売ってるのかな。いや無いな。ここの世界ポケモン居ないし。アイス屋は同じ階にあったようですぐに着いた。

「じゃじゃーん!ここがわたしイチオシ、アイス屋さん!」

そこは41と書いてある看板(屋根みたいだ)の下にアイスの箱という至って普通のアイス屋だった。

「何これ、バイバニラアイス?」

「は!?」

俺はその単語を聞いてどれほど驚いたことだろうか。思いきしひなたを見る。ひなたは苦笑いをしながら俺の方を振り替えってまた説明をはじめた。

「今ポケモンキャンペーンっていうのやってるらしいよ。買う?バイバニラアイス。」

俺はぶんぶんと縦に首を振る。

ひなたは店員にバイバニラアイス2つと言って会計を済ませ、すたすたと俺の所へ帰ってくる。

「はいコレ、バイバニラアイス。」

差し出されたそれはまさしくバイバニラそっくりのアイスだった。

「なんか食べるの勿体ねえわ。」

「そう?」

「食べるの早っ」

ひなたはもう半分までバイバニラアイスを食べていた。俺はといえば、まだ3口。そっくり過ぎて逆に本当に食べるのが勿体無いのだ。そうしている間にもどんどんひなたは食べ進んでいく。俺のは溶けていく。

「トウヤ食べないの?」

「食べる。」

「えーじゃあ一口ちょうだいよ!これおいしかったし!」

「やだ。もったいない。」

「溶けちゃうほうがもったいなくない?あーあーたれてるたれてる!」

俺は急いでコーンのほうをもって一気にバイバニラアイスを口の中に詰め込んだ。ひんやりを通り越して口の中が痛くなる。

「あははその顔リスみたい!」

そう言ってひなたは笑った。どっかの地方にパチリスっていうポケモンが居るとアララギ博士が話していた記憶がある。ひなたに、見せてやりたいな。

「トウヤ…?どうしたの…?」

「なんでもねーよ!こっち見んな!」

いつの間にかひなたをじろじろ見てたらしい。ひなたは不思議そうな顔をしたまま、俺の前を歩き出した。


「次どこ行くんだよ。」

「えーっとね、そうそうここここ!」

じゃじゃーんとひなたは手を広げてそれを指差す。…箱?見たことの無い大きな箱みたいなものがある。なんだかまぶしい色をしている。

「えっ、トウヤ知らないの?プリクラっていうんだよコレ。」

入って入ってと俺を押しながらひなたは中へ入っていく。なんなんだコレ。カメラがあって、中は他には画面と…それ以外は無い。

「初めて見た。」

「へえ…ポケモンの世界にはこれ、無いんだね。」

ひなたは少し寂しそうな顔をしながら画面を押す。小銭は入れといたからねとにいと笑う。

「何いきなり気持ち悪い」

俺がひなたのほうを振り向いた直後、かしゃり、と音がした。

「トウヤ何この顔、面白すぎ!」

ひなたはけらけら笑う。ひなたが見てる先を眺めると画面に俺とひなたが写っていた。ふーんこういう顔もするんだひなた。その横に写る俺はものすごく目つきが悪くて、自分でも噴出す。

「次始まるよー!」

「今度はひなたが変な顔しろよ。」

「しないし!」


「ふー…面白かった。」

プリクラという機械での撮影が終わって、俺は今印刷されてきた紙切れを持ちながらひなたと服屋に居る。落書きって言うのも面白かった。今度機械があったらひなたの顔にひげでも書いてやろう。

「トウヤーこれ似合う?」

「お前こっちのほうが似合うと思う。」

ひなたが服を持ちながらひょっこりと試着室から顔を出す。何ナチュナルに答えてんだ俺そしてちゃっかり服を差し出すな俺。

「ありがとー!トウヤってセンス何気にいいよね。」

にへらとひなたは笑いながらカーテンを開ける。俺が差し出した服を着たひなたが居た。

「何気にってなんだよ。お前こそかわ…わ、わ、いくねーよ!」

「ノリツッコミ!?」

駄目だ俺どうしたよ俺。こんななすびなピーマンかわいくねーよなすびなピーマンってなんだよピーマンだし。いやなすびだし。もうワケわかんねー。

「この服買うことにするよ、かわいいし!」

俺が言えなかった言葉をあっさりと口にしてひなたは元の服に着替えたらしく試着室から出てきた。俺が差し出した服を抱えて、レジへと向かっていく。俺はぼんやりとその後姿を見送った。


「今日はありがとー。楽しかったよ。」

帰り道を歩きながらひなたは俺のほうを振り返って言う。

「別に…お前が行きたいって言ったからついてっただけだし。」

「どっちかというとトウヤのほうが乗り気だったけどね。」

ひなたが持ってる紙袋を奪い取る。なんか重そうで、なぜだかむかついたから。

「あ、なにすんの!」

「こんな重そうなの似合わねえし俺が持っとこうと思って。」

「…ほんとありがとね。」

ひなたがそう呟いたきり家に着くまで会話は無かった。トウコと、ベルと、チェレンの姿が頭をよぎった。なんであいつらと居るときより楽しいんだ、俺はあっちの世界が居場所なはずなのに。




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