3日目:ギブアンドテイク
トウヤ視点

今日もひなたと両親は張り気ってそれぞれの場所へと行った。俺も連れてって欲しいとは思わないけど、昨日のごとく暇で暇でしょうがない。TVは昨日のドロドロしたドラマの続きがやっていたけど気になることは当然無く。ひなたの母さんに頼まれた掃除洗濯皿洗いも終わってしまった。専業主婦かよ、ばっかじゃねえの俺。1人で自分を鼻で笑ってみたって傍から見ればドMに見えるだけだ。…こんなの俺のキャラじゃ無いだろJK。
そんなことを考えながらリビングをうろうろしているとテーブルに紙切れが置いてあることに気がつく。なんだアレ。近づいてみると、ひなたの母さんの字でひなた宛に買ってきて欲しい食材やら生活用品やらを書いたメモとお金が横に置いてあった。へー丁度いい暇つぶしになりそうじゃん。スーパー場所分かんねーけど。スーパーを探して買って帰ってきた頃にひなたは帰ってくる、そんな気がした。今相棒居ないけど伊達にチャンピオンやってないんだからなめんなよ!そんなノリで俺は玄関から出て行った。



***
ひなた視点


今日も急ぎ足で帰ってくる。
リビングに入って、食卓の上を見たわたしは唖然とした。ナニコレ珍百景。
食材と生活用品の山、山、山。どういうことだとトウヤを見ても当の本人は昼ドラを見ながらひいとかほおとか言っている。

「ただいま。トウヤー…これどういうこと?」

「ああひなたか。」

振り向いたトウヤを見て更に唖然とした。顔も膝もすりむいて傷だらけ。ほっぺたの傷はまだ血が止まってないらしくじんわりと鈍い紅が滲んでいた。

「ちょっと!なにがあったの!」

わたしは急いで救急箱を取り出そうとする。ああ、どこやったっけ、どこやったっけ。
棚をがさがさと漁るも肝心なときに出てこない救急箱。ちょっと救急箱自首しに来いよ。

「大丈夫だって。買い物行ったら怪我しただけだから。」

へらりとトウヤは笑った。

「いや買い物で怪我ってどうしちゃったの。」

真面目にほんのちょっぴり心配になっちゃうじゃん。救急箱がぼたりとどっかの棚から落ちてきてわたしの頭に直撃した、痛い。

「俺の手当てするついでにひなたの頭も治療したら?」

「どういう意味で?」

「そういう意味で。」

とことんむかつかせてくれる腹黒大魔王よろしくトウヤは頬を自分の手でなぞって「いたっ」と呟く。救急箱を持ってTVを見てるトウヤの横に座るとトウヤと目が合った。さあ事情聴取をはじめようか。


「えっ?スーパーの場所知らないのに買い物行ったの?」

「文句あんのかよ。」

「危ないじゃん、今度からわたしも行くし。」

「お前の母さんにお世話になってるからいいんだよ、こんくらい。」

ちょっと事情聴取をしたことを要約すると俺、トウヤ!10歳(夢オチ)!イッシュ地方のチャンピオン!ひなたの家にトリップしてきちゃって朝そいつの母さんがひなたに置いてった買い物のメモ見つけて結構お世話になっちゃってるし道もしらないのに買い物にチャレンジしてきたら、坂道やらアスファルトやらに引っかかって転びまくったんだぜ!…ということらしい。全く要約出来てない。意外とトウヤは親孝行者なのかもしれない。うっそ、あの腹黒が?冗談でしょ?

「大丈夫じゃないって…トウヤ怪我してたらお母さん心配するんだから。」

「ひなたは心配しねえの?」

「…するに決まってるでしょ、ばか。」

なんだこのバカップルみたいな会話。珍しく可愛いオーラを出してるトウヤ、恨みたい。わたしはトウヤに応急処置程度の治療を施す。まあ、応急処置程度で直ると思うけどね。消毒液をじゃぼーと掛けたら可愛いオーラだしたトウヤは一瞬でどす黒くなった。ごめんよトウヤ、わざとじゃないんだよわざとじゃ。掛けるという作業が壊滅的に苦手なわたしには紐無しバンジー並みに無謀な作業だったのさ。こうしてトウヤは犠牲となったのだ。…んなわけあるか。


なぜかわたしとトウヤはお父さんとお母さんのエプロンを装備、レッツクッキング状態になっていた。普段全く料理しないお父さんのエプロンがなぜ家にあるのかが意味不明だけどどうでもいい。問題なのは目の前に居る頬っぺたにばんそこうを貼ったトウヤに異常にエプロンが似合ってて言葉に表せないくらい可愛いと思ってしまったわたしについてだ。異常にエプロンの似合う頬っぺたにばんそこうを貼ったトウヤも問題だけどそんな大魔王を一瞬でも可愛らしいと思ってしまったわたしのほうが大問題だ。昨日の朝からだけど。寝顔が可愛かったり頬っぺたにばんそこう貼ったエプロン姿が可愛かったり、なんなんだこの子は。咲が萌えについてうんぬんかんぬん言ってたけどもしかしたらこれがその萌えかもしれない。うわあオタク化進んでるわたし、咲にオタク移されちゃう。別にオタクを否定するとかじゃなくてオタクの何かに執着するという行動がわたしの肌に合わないだけだ。そんなことを思いつつ食材をごそごそと取り出す。ビニール袋から「こんにちは!僕ら肉じゃがブラザーズ!」と言わんばかりにぴったり4人分の肉じゃがが作れる食材たちが出てきた。

「これは…。」

「作るしかないだろ。」

「ふ、2人で?」

「お前1人で肉じゃがも作れないの?馬鹿なの?」

「作れるもん!馬鹿にしないでよ!」

死ぬの?とは言わなかったトウヤにありがたいと感じかけたわたしはちょっとおかしくなってきてると思う。馬鹿なのか聞かれてありがたいなんてそんな発想はごくごく一般人のわたしにはなかった。わたしはいやにエプロンが似合う頬っぺたにばんそこうを貼ったトウヤ(最後までばんそこうを強調する)を尻目にジャガイモを洗い始めた。




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