最果て


真っ暗な夜に浮かぶ小さな月から放たれる光が窓から差し込んで黄ばんだ床に煌びやかに窓の模様を映し出していた。
わたしはもう眠ろうとしていたのでその細い光を避けるように置いた、木で出来た小さなベッドの上に横たわっていた。
高さが低すぎるからと2個積み重ねた枕に頭を埋め、わたしの顔は2枚重ねた毛布に半分程覆われていた。
自分の体温がわたしの指先の冷たさに触れては溶けていった。
目を軽く閉じると、わたしの視界内と言う狭い世界に闇が広がり浮遊感に襲われた。
無重力になったわたしの意識は、まぶたや毛布さえも重たいと感じるほどだった。
広く果てしない闇の中でそのうちに意識さえも重たいから手放してしまおうかという考えをわたしの意識が浮かばせた。
わたしは、流されていくように闇を漂う意識に身を委ねた。
意識はあまりにも素直にわたしをどこかに連れて行こうとしていたがそれは誰かのせいで叶わなかった。
誰にと言われればそれは紛れも無い、自分自身にであった。
わたしは、喉と鼻の奥の中間辺りに少ない力を込めて息を止めた。ただ意味も無く死んでみたいと思った。
死んでたどり着いた先には、ずっとずっと遠い場所には何があるか、そこでわたしは何をするのか知りたいという単純な好奇心が、一色の色の絵の具を水を少なく含ませた筆でぐちゃぐちゃにかき混ぜるようにあった。
わたしは息を止めながらも口を小さく開けて少しずつ、少しずつ肺に溜まった空気を吐き出していった。
その時は苦しいと微塵とも感じなかったのに、肺から空気を全て外に吐き出した後、急速にわたしの体は酸素を求めた。
つい最近誰かが酸素は長い時間をかけて体を蝕んでいく、だから生き物はいつか終わりを迎えるのだ。と言っていた。
どうしてそんなものを体は欲しがるのだろう、そんな疑問がわたしの意識の片隅に錘(おもり)のようにぶら下がって、意識が少し重たくなった。
腕から指先までの血の巡り方が気持ち悪いほどわかるようになった。
闇の中に、赤い何か網のようなものが広がっていた。
これはまぶたの裏の血管か何かなんだろうとわたしは思った。何だってよかった。
もしもクモが今さっきわたしのまぶたの裏に張り巡らした巣だったとしても、金網状のざるを目の形に合うように切り抜いてまぶたのうらに縫い付けたものだとしても、わたしは構わなかった。
どんな理由でも、わたしはありのままに受け入れていただろう。
わたしは海のように広い心に満たされていた。それを感じたところでわたしは息を止めるのを止めた、
反動でわたしはしばらく息切れのような状態に陥った。文字通り、息切れだった。
わたしはそっと、落ち着きを取り戻した息を吐き出す唇を指先でなぞった。
唇は温かく、わたしの冷たい指先を体温とおなじように受け入れた。
わたしは指先がその温かさに包まれた時、自分がその遥か彼方にある場所に逝くにはまだ幼すぎるということを悟った。
そこにはただ死という事実だけが歴然とある、そんな気がした。
わたしにもいつか、訪れるのだろう。
体を酸素に蝕まれ、緩やかに息絶える日が。
命を源の母なる海へと還した後に、最果ての地を見る日が。


最果て
(未だに激しく打つ鼓動の音だけが、わたしの脳内で響き続けていた。)

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ポケモン関係なさ過ぎてごめんなさい。
某VOCALOID楽曲さまに少しだけ影響を受けて。




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