バレンタインデイ・キッス(ギーマ)


お昼時、わたしは普段料理もしないくせに、この日に限って調理器具をいじりまわしていた。
「もしもし?そう!うんそうそう。そうなのー!えへへ、珍しいでしょう。」
友人と電話をしながら、チョコレートを溶かす。
あれ?強火だっけ?弱火だっけ?まあどっちでもいいだろう。
わたしは適当に火を強火に設定する。あれ…おかしいな、つかない。
何回もカチッカチッとやっている間にジングルベルの音が玄関から鳴った。
わたしの家は彼がいつの間にかつけていたインターフォンの設定で、
誰かがインターフォンのボタンを押すとジングルベルの音楽が鳴るように設定してある。
そのおかげでもう2月だというのに未だにクリスマス気分だ。
「ああ誰か来ちゃった。後でかけなおすね!」
今日は特に予定も無い。バレンタインとかいう日だけども、
彼は仕事で忙しいから、わがままを言って一緒にブンシャカするわけにもいかないのだ。
玄関までぱたぱたと駆けていくともう玄関のドアは開いていた。
「こんにちは、匿名。」
わたしはそこに居る人物を見て、息を呑んだ。
そこに居るのは本来なら次から次にくるトレーナーとヤッホヤッホトゥララ
しているはずのわたしの彼氏、ギーマだった。
「ぎ、ギーマ…なんでドア開いてるの…今日仕事じゃないの…?」
「玄関の鍵開いてたぜ。いくら今日がバレンタインといえ気が緩みすぎだ。
昨日レンブに相談したらあっさり休みが取れたんだ。あがらせてもらうぜ。」
わたしの質問にトレース紙並みにぺらぺらと答えたギーマは、
ずん・ずんずんずんどこ(キヨシ!)とキッチンの方向へ入っていく。
「わ!だ、だめ!そっちはうん、だめ!」
「甘い香りがするんだが…何か悪いことでもしていたわけじゃないだろう?」
ギーマは今日はなぜだか機嫌がいいようでいつもはポーカーフェイスのままなのに
にっこりと笑ってわたしに問いかけた。まあ悪いことはしてないけど…。
「い、いやべつに!そういうわけじゃなくて!」
そんなことを言っている間にもギーマは前に立ちふさがるわたしを持ち上げ
キッチンの方へと入っていった。
「…チョコじゃないか。」とギーマは言った。
「そうでゲソ。」わたしがそう言うと、空気は一瞬白けたけどギーマはさっきの微笑を取り戻す。
や、やばい…匿名ちゃん大ピンチ…なんとなく気まずい雰囲気が漂っている。
「これ、ワタシにあげようとしていた物なんだろう?」
チョコを密造してこっそりギーマの家のポストにでも押し込もうとしていた計画…
その計画を今ここで終わらせるわけにはいかない!しかしここで嘘をついたってしょうがない。
「そ、そうだよ!」
わたしはあっさりと認めた。うん、これでたぶん何とかなるはず、たぶん。
「まだ完成してないじゃなイカ。まったく匿名はしょうがないな。」
「夕方に完成させようと思ってたKARA…。」
某イカ少女のような口調のギーマに理不尽な言葉を、
わたしは某K-POPのアイドルグループのような単語をつかって返す。
そういえばあのグループはどうなったんだろう。
情報遅れなわたしにはなにがどうなってるのか分からずどうしてああなった状態である。
段々ギーマの優しいはずの微笑がニヤニヤしているように見えてきた。
「ギーマの変態!悪霊退散!」
「なんなんだい突然!ワタシは無罪だ!まだ何もしていないだろ!」
「まだ!?やっぱりする気だったんだ!?」
「いや違う!誤解なんだ!豆は人に投げる物じゃないぜ!
節分はもう終わっているだろう!ちなみにその豆賞味期限切れてるんだぜ!」
「でも悪霊の悪は当たってるでしょう!」
「あくタイプの専門ってだけで、ワタシに悪いことした覚えは無い!」
そんなことを言い合いながら小一時間わたし達は走り回った。ああスッキリ。
みなさん、ハッピーバレンタイン!運動不足は確かお肌の大敵のはずですよばちこーん。


バレンタインデイ・キッス

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110214(バレンタイン記念) ゆめのあとちに置いてあるもののギャグver。
タイトルにキッスって書いてあるのにちゅーしてないですごめんなさい。




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