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もんじ/芍薬とちみもんじ+留文小話



六年生のお花畑でだいぶ妄想しました。
追記は留文童話もどき。



花売りの留三郎



畠を耕して暮らしていた留三郎は、ある日畠の隅に、見た事のないきれいな花を見つけました。

そして、淡く大振りな花弁の真中にちょこんと座る、小さな花の精もんじろうと出会ったのです。

もんじろうの姿は人のそれだけれど、その花から離れる事はかなわない。

そして、花の季節が終わると、もんじろうの姿も消えてしまうのだと言います。


「泣くな留三郎。」

「俺はこの花の精だ。そして、花は花のみで咲いている訳ではない。」

「枯れ果てる俺は沢山有るが、また数百、数千の種に宿る俺も居る。」

「寒い間は眠り、形を変えて土に根を張り、」

「暖かくなれば腕を張り、葉を繁らせる。」

「土や日の光の恩恵を受けて、またお前の前に現れる事ができる。」

「人の形ができるのは、どう言う訳か俺1人だが、」

「落ちる種も、張る根も、繁り増える茎や葉も全て俺なのだ。」

「また来年、お前と話せるように、お前はその逞しい腕で畠を守っていればよい。」

「姿は見えずとも、俺はずっとここに居る。」

次の年の留三郎の畠は、良く手入れされた土のおかげか、その花は去年より沢山さいていました。その次の年はもっと、そのまた次の年も。

そして、いつしか畠全てが花畑になり、留三郎は花売りになっていました。

留三郎の花は珍しい上に、特別生き生きとしていて、町でも評判になりました。

花売りの留三郎は、決まって最後の一輪を残して店を畳みました。そして、その花と共に家路に急ぐのでした。
その花の上に、もんじろうが居る事は誰も知りませんでした。

そして何十年も経ち、お爺さんになるまで花売りを続けた留三郎は、貯めたお金で花畑の真ん中に、立派なお墓をつくりました。

そして、また数年。

お爺さんの姿が見えなくなった頃、何故かその花はさらに綺麗に咲くようになり、いつまでも、いつまでもお墓の周りを飾り続けたそうです。

遠くの国から、風に運ばれてやってきた、人に恋した花の種は、好きな人と結ばれて、ずっとずっと、しあわせだったとさ。


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