そんなやり取りから数日。あの時疑問に思ってた事なんか綺麗さっぱり忘れていた帰宅途中。
珍しく明るいうちに帰れるので足取りも軽く、今日は佐助をいっぱい構うぞ〜と鼻唄なんか歌いながら家に向かう足を速めた。
そんな呑気な事ばかり考えていたからか。
「ちょっと驚かせてやろう」
いつもと違う事をしてやろう、なんて思い付いたのは。
そろりそろりと鍵を開けて、息を殺して廊下を渡る。
最後の最後まで気を抜かず、手にかけたドアを思いきり開け放った。
「ただいま佐助くん!あきちゃんのお帰りだぞう!」
ばん!と遠慮のない音を立てて開けたドアの先に見慣れたキャラメルブラウンの尻尾と三角耳。
「…え、っと……あれ?」
でも私が見慣れているのは「キツネ」の佐助。入ってきてそのままの奇妙な笑顔を貼り付けた私の目の前にいるそれは。
「…え、え、なんで……あきちゃん…」
綺麗なキャラメルブラウンの大きな三角の耳とふさりとした尻尾を持つ、小さな男の子だった。