セレスに会いに行った帰り道、久しぶりに王立研究所にも顔を出そうと思い私はサイバックへ立ち寄りました。
ここへ来るもの久し振りですね…
みんな元気にしているでしょうか。
またひどい扱いを受けていないといいのですけれど…


「監視役ならついてくればいいじゃん。慈悲深い神子さま」


神子、さま?
研究所の扉を開ければ真っ先に聞こえてきた言葉に私は思わず固まってしまいました。
神子様っていいますと、その、あれですか?
いや、この世界に神子様は一人だけ、それもとてもよく知っているといいますか…
ついさっきまで思い出したくないとか考えていた手前、今は会いたくないといいますか。
しかし無情なことに扉はすでに重い音を立てながら開いてしまっていて、当然意中の人は私を見るわけでありまして…


「え、マジ…?」


それはいったいどちらに向っていった台詞なのですか、ゼロス様。
きっと私にですね、目線がこっちに向いています…
というかなぜあなたがこんなところに…


「ゼロスの知り合いか?」
「ロイド、今はそんなことよりコレットの方が大切でしょう?」


綺麗な銀髪の方にそんなことと言われてしまいました…
いつまでも入口に立っていても邪魔になってしまうので、私はそっと中へ入ります。
そのまま黙って奥へ行こうとすれば視線を感じて私は恐る恐る振り返りました。
ああ、ゼロス様がとても素敵な笑顔で手まねきをしています…
大切な話をしているようなので邪魔をしないように気をつけながら私は渋々ゼロス様たちに近づきました。
これを無視したらまたどんな嫌がらせをされることか…
先日の許嫁騒動は半日足らずでメルトキオ中に知れ渡り、おもに女性からの嫌がらせが絶えませんでした。
あんなことは二度とごめんです…


「…そう言われたらチクる訳にはいかないでしょーよ」
「よし。あとは燃料だな」


いつの間にか話が済んだようで私は早く解放してほしいと思いつつも、なんだか厄介なことに巻き込まれそうだという予感が消えませんでした。
そしてその予感は見事に的中したのです。


「神子さま。聞かせていただきましたぞ」


突然私の目の前に教皇騎士団の方々が現れました。
聞かせていただいたって、どこで聞いていたのでしょう。
隠れられるような場所はなかったと思うのですが…


「テセアラの滅亡に手を貸した反弱者として神子さまとその者たちを反逆罪に認定します」


反逆罪?
反逆と言いますと、国家転覆などを狙うあの反逆ですか?
ゼロス様が?
まさか!そんな筈はありません。
ゼロス様がそんな面倒なことをするわけがないではないですか!


「…ちっ。ずいぶんとタイミングがよすぎるじゃねぇか。教皇騎士団さんよぉ」
「取り押さえてサンプルを採れ」


一人の騎士がそういうとゼロス様のお仲間と思われる方々をほかの騎士たちが調べ始めました。


「ラディス様も念のため調べさせていただきます」
「え!?」


どうして私もなんですか!?
ちょ、ちょっと待ってください!
どうして私も地下へ連れて行かれるんですか!?


「え、え!?」
「大人しくしていてください」


だからどうして私もなんですか!?


「おい、今は言われた通りにしとけって」
「ゼロス様!?」


そうは言われても納得がいきません!
そんな私の心情を察してくれたのか、ゼロス様は私にそっと耳打ちをしました。


「お前、オレ様たちの仲間だと思われてるんだよ」
「………えぇ!?」


仲間
「私、ゼロス様以外の人とは全く無関係です!」
「あーあ、巻き込んじまったぜ」


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