俺は高校生モデル、苗字名前。幼馴染で(はないけど)同級生の逆巻スバルと職員室に行って、変な制服を着た怪しげな男が女の子に襲いかかって首に噛み付いている現場を目撃した。現場を見るのに夢中になっていた俺は背後から近付いてくる、もう一人の仲間に気付かなかった。俺はその男に昏倒され、目が覚めたら…

「幼馴染で(はない)同級生に襲われかかっていた!」
「うぜえ…」
「ぐぇ!」

さすがスバル…いいパンチだ。でも俺を昏倒させるには足りないな…

「お前の拳に足りないもの、それはハートだ!」
「…はー…」

おやおや、俺の言葉に感動して言葉も出ないのか…スバルは何かを諦めたような目で俺の上からどいた。ここはどこだ?俺とスバルは職員室に向かっていたはず…
俺はなぜか天蓋付きのベッドに寝かされていた。見たこともない豪華な部屋を見回して俺は首をかしげる。本当に豪華な部屋だ…照明少ないけど。なんで照明がロウソクなんだ。…はっ、もしかしたら…

「スバル…やばいぞ、俺たち誘拐されたんじゃないか!?」
「…」

そうだよなー俺みたいなかっこいい男がウロウロしてたらつい攫っちゃうよな…まだぴちぴちの16歳だけどあと4年もすれば色気とかフェロモンが出ていい感じの美男になるだろうし、気持ちはわかる。
ああ、なんてことだ!俺の美貌が罪もない同級生を巻き込んでしまった!

「あ、あの…」
「ん?」

俺がどうやってこの窮地から脱出しようか天才的な頭脳をフル回転させて考えていると控えめに声をかけられた。振り返ると華奢だけどとても可愛い女の子が俺を見つめている。

「ああ、ごめんね。今ちょっと考え事しているんだ。サインならちょっと待っててね」

にっこりと笑顔を浮かべて俺は再び考え込む。

「さ、サイン?あの、違うんです!」
「え?じゃあ握手かな?いいよ、これからも応援よろしくね」

サッと白くて細い手を取りパチンとウインクをする。まったく、こんな時でもしっかりファンサービスをしてしまう自分が恐ろしいぜ!
ああ、それにしても本当にここはどこなんだ?誘拐にしても俺は拘束もされていないし、この子が誘拐なんてしそうには思えないし…それにこの子どこかで見たような…

「何をしているんです?」

ヒュンと背後から俺の顔スレスレに何かが飛んでいき壁にぶつかって砕けた。ガシャンと耳障りな音が静かな部屋に響き渡る。
驚いて振り向くといつも間にか三人の男がベッドの周りを囲んでいた

「テメェ、誰の許可とってチチナシに触ってやがる」
「もービッチちゃんってほんっとーに、ビッチちゃんだよねぇ…もう男をたらしこんだの?」
「不潔ですね」
「ち、ちが…」
「なにが違うんですか?なんでそんな見ず知らずの男を庇うのかと思ったら、そういう事だったんですね」

三人は暴言を吐かないと死んでしまう病気にかかっているんじゃないかってくらい女の子を罵った。罵り方は揶揄するように、馬鹿にするように、ヒステリックにと三者三様だったが、とても聞いていて気持ちのいいものではなかった。

「おいお前ら!なんてことをするんだ!」

俺は怒りに震えた。女の子への暴言もそうだが、それよりなにより、俺は許せなかった。

「モデルは顔が命なんだぞ!」

まあ俺は多少顔が傷ついてもモデル生命が終わるなんてことありえない、むしろ泊がつくってもんだけど俺のファンたちが泣くだろ!

「それに!その子は何も悪くないだろ!そんなに怒らなくても、俺は男のファンとだって喜んで握手をする!」

さあ、順番に並ぶんだ!
高らかに言い切った俺を見て、部屋の隅で様子を見ていたらしいスバルはもう一度大きなため息をついた。





残念なモデル、吸血鬼と出会う




スバルとそのお兄さんが吸血鬼で、吸血現場を俺が目撃してしまったため口封じのためにこの屋敷に連れ込まれたことをユイちゃんから説明されるのはもう少し先のことだった。



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