ユーリがちょっとおバカです。

今朝は珍しくすっきり目覚めることができた。
それに目玉焼きがうまく焼けたし、何よりこの快晴!
どれもこれも俺の一大決心を後押ししてくれているように感じる。
いつもより少しだけ身だしなみに気を使い、俺は(人にわからない程度だが)緊張しながらも彼女に声をかけた。

「おい、名前。話がある」
「なあに?突然」

昼食の準備をしていた名前がエプロンで手を拭きながら俺のほうに近づいてくる。
その姿はまるで新妻のようで思わず心拍数が上がった俺を誰が責められれよう。
考えに浸っているうちに名前は俺の目の前に立っていた。

「どうしたの?何か御用?」
「好きだ」

小首をかしげながらの上目づかいに俺は昨日考えた告白の内容など全て飛んでしまっていた。
直球過ぎた気はするが告白には変わりない。
驚いたのか目を見開いた名前はしかしすぐに優しく微笑んだ

「本当に突然ね。でもありがとう、ユーリ。私も好きよ」

もうすぐご飯の用意できるから、カロルたち呼んできてもらえる?
名前は終始笑顔のまま俺に背を向けた。
っておいちょっと待て!

「名前!」
「なあに?」
「だから、その…好きだ」
「うん、だから私も好きよ?ユーリのこと」

マジかよ。
こいつってこんな鈍感だったか?
ここまで言って気がつかないとかありなのか?

「ユーリ?」
「いや…なんでも、ない」
「変なユーリ」

ご飯冷めちゃうから早く呼んできてね?
笑顔で名前は今度こそ戻って行った。
…肩を落としながらもカロルを呼びに行った俺を誰か責めてくれ。







「名前、好きだ」
「はいはい。私も好きよ」

今日も今日とて健気な青年は思い人に自分の気持ちを伝えようと努力している。
まあ報われてる気配が皆無なのが悲しいところよね。
最初は戸惑ってた(ってか赤面してた?)お子様たちもすっかり慣れてしまったようで気にせず各々の作業を進めている。
それにしてもあそこまで鈍感な名前ちゃんってある意味凄いわよ?
おっさん青年に同情しちゃうわ。
あ、言ってるそばから青年が重苦しい足取りで戻ってきた。

「よう青年。青春だわねぇ」
「あ?」

ドスのきいた声色に思わず後ずさり。
あらら、これは相当荒れているようで…
さすがにこの場で冗談かませるほどおっさん命知らずじゃないわ。
素直に道を譲って危険を回避。
ユーリは特につっかかって来ることもなく、毛布に包まって不貞寝を始めた。

「はぁ、困ったもんよね」

恋愛って大変だわ。
仕方がない。
ここはおっさんが一肌脱いであげようじゃないの!

「あら、ずいぶん楽しそうね?」

ユーリと入れ違いにやってきたのはジュディスちゃん。
ヤローが去って美人が来るなんて今日のおっさんはラッキーね。

「そーなのよ。おっさんこれから若者たちのキューピットになろうと思って」
「キューピット?」

何のことかわからず首をかしげるがすぐに合点がいったようねニッコリと微笑んだ。

「止めておいた方がいいわ」
「あら?シュディスちゃんならノリノリだと思ったんだけど?」
「そうかしら?まああなたがキューピットになるって言うなら無理に止めはしないわ。頑張って」

意味深な笑顔のままジュディスちゃんも去って行った。
なんなのかしら?

「名前ちゃん」
「あ、レイブン。なあに?お昼御飯のリクエスト?残念だけど今日はカロルの希望でクレープなの」
「ぜひとも甘いもの以外にしてほしいけどリクエストじゃないわよぅ」
「そうなの?」

この子、俺様のことどんな風に思っているのかしら?
…怖いから聞かないでおこう。
それにしてもなんと切り出したらいいものか…
よし、ここは無難なところから、

「ねえ、名前ちゃん。最近ユーリおかしくなぁい?」
「ユーリ?そうね。ちょっとおかしいかも」

よかったわね青年!一応普段と様子が違うとは思われていたみたいよ!

「好きって一日に一回は必ずいうの。私だってユーリのこと好きだし、そんなに毎日言わなくてもわかってるのにね?」
「それはきっと名前ちゃんが勘違いしてると思ってるからよ」
「勘違い?」
「そう、名前ちゃんの好きと青年の好きは違うのよ」
「同じよ」

妙にはっきりと言った名前ちゃんに疑問を持つが、このままでは青年がかわいそうだ。

「だからね、ユーリの好きは恋愛対象の『好き』で、」
「だから、同じだってば」
「…へ?」
「私はユーリが『好き』よ。何度も言ってるのに何で気がつかないのかしらね?」

レイブンもユーリも
心底愉快そうに名前ちゃんは笑い続ける。

「訂正するのもつまらないし、気がつくまでこのままでいようと思うの」

だからユーリには秘密よ?
そう言って笑う名前ちゃんは今まで見たこともない女の顔をしていた。
…最近の子って怖いわ。
おっさん泣いちゃいそう…
青年、頑張れ。
これからは遠くから応援するわ







(「だから言ったでしょ?止めておいた方がいいって」「ジュディスちゃん知ってたの?」「ええ、面白そうだから本人に教えるつもりはなかったけれど」「本当に最近の子って…」)



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