マジカル★イチコねた





セシルによる前回までのあらすじ。
ついに6人目のミュージックプリンセスの手掛かりを手に入れたイチコたち。しかしそれはザツオンリョウ四天王の一人、オータムンの罠だったのです!オータムンの策略によりイチコたちは窮地に追い込まれてしまいます!絶体絶命の彼女たちの前に現れたのは現役モデルの唯。彼女の手には光り輝くピンクシャイニートーンが握られていました!

「唯ちゃん!?」
「皆、遅くなってごめん。でも私が来たからもう大丈夫!」
「唯!」
「オトミ、お前のおかげで目が覚めた。変身のセリフが恥ずかしいなんて言ってられない。こいつらを倒さない限り、私の音感は戻ってこない!もう、音痴なんて呼ばせない!行くわよオータムン!シャイニングプリンセスチェンジ・ドレスアーップ!」

唯は高らかに変身の呪文を唱えた。やはり音程は外れている。
「音程外れてるとか言うな!」
「翔、素が出てますよ」
「あ、わり…ゴホン。さあ、いつまで寝てるつもり?私たちであいつらをやっつけるわよ!」
「唯…そうね。ミュージックプリンセスが6人そろえば怖いものなんてない!」
「アンタをアタイの鞭の錆にしてやるから覚悟しな!」

プリンセスたちはそれぞれのシャイニートーンを構えなおす。6人そろったことで本来の力を取り戻した彼女たちはザツオンリョウをばったばったとなぎ倒していく。そしてついに残すはオータムンのみとなった。

「さあ、追い込んだわよオータムン!」
「よくもアタイのやわ肌に傷をつけてくれたわね!ここをアンタの墓場にしてやんよ!」

シャイニーウィップ片手に鬼のような形相を浮かべるイチコ。

「イチコちゃん、それじゃどっちが悪役かわからないよ…」
「お黙りオトミ!乙女の肌を傷つけるなんて万死に値するわ!」
「痛い!痛い!わかった、わかったから鞭振り回さないで!」
「…フッ、ハハハハハハハ!」

追いつめられておかしくなったのか、オトミとイチコの漫才がつぼに入ったのか、今まで一度も口を開くことはなかったオータムンは突然笑い出した。

「おもしろい…最後のミュージックプリンセスが、唯だったなんてなぁ…」
「え、そこ!?今更そこ!?」
「その声…まさか…」
「ああ、お前の思っている通りさ」

イチコのつっこみはスルーされた。少しへこむイチコの肩をマサミと恋がそっと支える。
そんな出番少ない組の様子など見向きもくれずオータムンはその顔を隠していた仮面を外し素顔をさらした。

「アキオ…」
「アキオってタレントの?」
「あれ?モノマネ芸人じゃなかったでしたっけ?」
「違う!」

オトミとナツキの言葉をさえぎるようにアキオは声を荒げた。

「俺はモデルだ!タレントでもましてやモノマネ芸人なんかじゃない!」
「アキオ、どうしてあなたがザツオンリョウ四天王なんかに!?」
「唯、アキオと知り合いなの?」
「ユイとアキオは同じ事務所の同期です。しかしユイがモデルとして売り出されるのに対して、アキオはモデル活動は二の次でバラエティの仕事ばかり回されています」

どこからともなく現れたセシルによりミュージックプリンスたちは唯とアキオの関係を知った。ご都合展開とか言っちゃいけない。

「あんなに音楽を愛していたじゃない!」
「…お前がそれを言うのか」

先ほどまでの様子とは打って変わって、アキオは俯き肩を震わせた。

「お前が!俺の夢を奪ったお前が何故と聞くのか!」
「夢を、奪った…?」

アキオは腰の剣を抜き唯に突きつける。

「俺たちが初めて受けたインタビューのとき、お前が俺の特技がモノマネだなんて言わなければ俺だってモデルの仕事を続けられたんだ!」
「そんな…」

絶句する唯に向ってアキオは剣を振るった。刀身はよけることができたが衝撃派をもろにくらい唯は後ろに吹き飛ばされる。

「うぁ…っ」
「唯!」

イチコたちが唯に駆け寄ろうとするがいつの間にか周りはザツオンリョウに囲まれていた。

「くっ…これでは身動きがとれん」
「唯ちゃん!アキオくんと戦ってください!」
「私には、アキオと戦うなんてできない…だってアキオはザツオンリョウに操られているだけで…」

フラフラになりながらも唯はシャイニートーンを構えることができなかった。そんな唯を馬鹿にするようにアキオは鼻で笑う。

「勘違いするな。俺はザツオンリョウに操られてなんかいない」
「!?」
「この世が雑音だけになれば俺はもうモノマネをしなくていい。だから俺はサタンに手を貸すことを自分の意思で選んだんだ!」
「そんな…」
「俺は絶対にトップモデルになる!そのためにお前には消えてもらうぞ、唯!」





「…」
「ふー…疲れた。でもうまくいってよかったね来栖」

第10回目のマジカル★イチコの収録が終わり俺たちは控え室で映像のチェックを待っていた。今回から登場の水瀬は特にNGも出さず、初のドラマとしては上々の出来だ。つーかむしろ…

「お前、ノリノリだったな…」
「そうかな?普通だったと思うけど?」

いやいやいや。普通じゃあり得ないだろ!なんですんなりあのキャラを受け入れてるんだよ!

「でも、そうだね。楽しかったよ。男装って新鮮だし」

たしかにこいつの男役は様になっていた。声はどう頑張っても女の声しか出せないが演技力で見事にそれをカバーしていた。

「…ホントお前こういうの得意だよな」
「まあ特技みたいなもんだからね」
「それにしても今回はマジで役そのものになってたっつーか…」
「そりゃそうだよ」

机に並んでいたお茶を手に取り水瀬はにっこりと笑った。

「後半は半分素だったからね」





演技5割本音5割





私だってモノマネ芸人になりたいわけじゃないんだよ?






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