6月3日

仕事を終えて寮に戻ったら談話室に渋谷と聖川とセシルがいた。

「お、今度は旦那の方か」
「は?」

いやいやこっちの話〜と笑う渋谷を怪訝に思いながらも部屋に戻った。一体なんだったんだ?





6月4日

食レポで街に出ているといつも使っている喫茶店でアキと音也がいるのに気がついた。外からなので向こうは気がついていない。アキは何故か顔を真っ赤にして音也に食ってかかっている。…何やってんだ。ちょっとムッとしたけど、他のスタッフが2人に気がついたら一大事だからすぐに目を逸らした。
…本当になにやってんだよ、あいつら。





6月5日

夜那月が部屋を訪ねてきた。明日からしばらくロケで海外に行くらしく、誕生日プレゼントを渡しに来たらしい。俺も用意してあったプレゼントを渡す。中身は那月が前から欲しいと言っていたピヨちゃんのトートバッグだ。偶然手に入ってこれは那月にピッタリだと思った。
…まさかプレゼントが被ると誰が思っただろう。てゆーかなんで俺にピヨちゃんなんだ!喜ぶと思っただと?俺様がピヨちゃんもらって喜ぶわけが、いや、嬉しくないわけじゃなくて…。あーもうわかったよ!使う!大切に使えばいいんだろ!サンキューな。

「うん、翔ちゃんプレゼントありがとう。とーっても嬉しいです」
「おう。海外ロケで怪我とかすんなよ?」
「はーい」

ニコニコ笑って那月は部屋を出て行こうとした。

「あ、そういえば」
「まだなんかようか…?」

那月は振りかえってニコリと笑った。

「アキちゃんって本当に可愛いですよね」
「は?お前何言って…」
「翔ちゃんは愛されてるなーって話です」

では明日早いので。那月は言いたいことだけ言ってさっさと帰って行った。
…何が言いたいんだ?





6月6日

部屋に戻ると机の上に綺麗に包装された箱が置いてあった。恐る恐る近づいてみるとカードが挟まっており、開くと見慣れた文字。なんだ薫か…。でも、あいつどうやって部屋に入ったんだ?
カードには大家さんに鍵を開けてもらったこと、勝手に部屋に入ったことへの謝罪と誕生日プレゼントを置いていく旨が書かれていた。
包装紙を開けて出てきたのはなんとケン王の限定フィギュア!驚きと興奮で思わずガッツポーズをしてしまった。さすが俺の弟!俺の好みをバッチリわかってる。お礼を言おうと携帯を取り出す。

「もしもし薫?俺だけど…」
『翔ちゃん?どうしたのこんな時間に…』

若干眠そうな薫に時計を見るともう0時を回っていた。しまった…興奮でつい時間の確認を忘れていた。

「あ、悪い。寝てたか?」
『ううん。ちょっとうとうとしてただけ。プレゼント見てくれた?』
「おう!見た見た!ほんっとサンキューな!俺もプレゼント贈ったから当日には届くと思うぜ」
『楽しみにしてるよ』

それから少し他愛もない話をしていたが、時間が時間だったのですぐに電話を打ち切ろうとした。

「じゃあな。身体には気をつけろよ」
『翔ちゃんには言われたくないな。…ねえ翔ちゃん』
「なんだ?」
『僕、お姉ちゃんが欲しいな』
「!?」

な、何を言い出すんだコイツは!?姉!?

『アキさんにもそう言っておいたから』
「はぁ!?」
『それじゃ、アキさんによろしくね』

ブツッ、ツー、ツー、ツー
俺はしばらく通話の切れた携帯を片手に固まっていた。

「…姉?」





6月7日

今日は音也とトキヤと同じ現場だ。既に音也とトキヤはスタジオ入りしていたらしく、2人で話しこんでいた。スタッフに挨拶しながら2人に近づく。

「…でね、アキってば顔真っ赤にしちゃってさ」
「水瀬がなんだって…?」
「あ、翔おはよー」
「おう」

ニコニコと笑う音也にそっけなく返事を返す。今確かにアキって言ったよな?もしかしてこの前のことか…?

「で、水瀬がどうかしたのか?」
「うーん…秘密」

ニパッと笑顔を浮かべてそう言い切った。

「…はぁ?」
「だから秘密。翔には教えてあげない」
「な、なんだよそれ!?」
「翔うるさいですよ」

スタッフが何事かとこちらを見ています。トキヤにそう言われて俺は口を両手で押さえる。すみません、と頭を下げているうちに音也はスタッフに呼ばれ問いただすことはできなかった。


「翔ー!」

仕事が終わって寮へ向かっていると後ろから音也が駆け寄ってきた。

「もう!酷いよ先に帰っちゃうなんて」
「別に一緒に帰る約束なんてしてなかったんだからいいだろ」
「あーそんなこと言うとこれあげないからね!」

そう言いつつ音也は俺に何か丸いものを押しつけてきた。

「早いけど、誕生日おめでとー」
「あ、さ、さんきゅ」

大人気ない態度をとっている自覚はあるから少し気まずい。すると音也は苦笑した。

「あのね、この前アキと偶然会って、一緒にご飯食べたんだ」

でもそれだけ。翔が心配するようなことは何もなかったよ。音也にそう言われて俺は急に恥ずかしくなった。

「べ、別に心配なんてしてねーよ!」
「うそだぁ嫉妬してたくせにー」
「うっせ!」

赤いであろう顔を見られたくなくて俺は寮に向かって走り出した。

「あ、ちょっと待ってよ翔!」





6月8日

「来栖くん!はいこれ、一日早いけど誕生日おめでとう!」

バラエティ番組の収録が終わり、楽屋に戻ろうとするとスタッフに声をかけられ、大きな花束を渡された。

「あ、ありがとうございます!」

まさかこんなサプライズがあるとは思っていなかったので上擦った声でお礼を言うと笑いが起きた。他のスタッフも集まってきて、おめでとうと声をかけられた。それにお礼を言ってしばらく話をし

てから楽屋に戻る。

「うわーこっちもすげー」

楽屋には大量のプレゼント。なんでもこの番組宛てにファンから送られてきたらしい。さて、どうやって持って帰ろうかと悩んでいるとドアをノックされどうぞーと声をかける。

「やあ、おチビちゃん」
「チビ言うな!」
「これ全部プレゼントかい?おチビちゃんも隅に置けないね」
「おい、人の話聞けよ」

レンは俺の様子など気にしないといった様子ではい、と一輪の花を差し出した。

「誕生日おめでとう」
「あーさんきゅ…」

ちょっと戸惑いながらオレンジの薔薇を受け取る。男へのプレゼントに薔薇ってどうなんだ?まあ、さまになってるけど…

「おチビちゃん明日オフだろ?」
「そうだけど?」
「昨日イッチーと話してたんだけど、誕生日パーティーでもやらないかい?」

シノミーは海外だから無理だけど、弟くんとかも呼んでさ。笑顔でそういうレンに俺は固まった。

「え、あ、いや…気持ちは嬉しいんだけど、明日は都合が悪いっつーか…」
「ブッ…」

俺が必死に言い訳を考えているとレンは突然吹きだした。

「クックック…ごめんごめん、冗談さ。明日は愛しのレディと過ごすんだろう?」
「…っ、お前なぁ!」

からかわれたんだとわかって顔が真っ赤になる。レンはごちそうさま、とウィンクをしてじゃあこの後仕事だからと楽屋を去って行った。何なんだあいつは!わざわざ俺をからかいに来たのか!

「ったく…なんなんだよ」

もんもんとしたまま携帯見ると1件メールが来ていた。送り主をみて口元が緩む。すぐに返信をして机に突っ伏した。

「…はーぁ、早く明日になんねぇかなぁ…」










早く君に祝われたい











TO 水瀬アキ
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明日の夕方、自宅にいて!


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