デビュー後設定
翔ちゃんが日向厨です(あんまり出てこないけど)










最近来栖が気持ち悪い。雑誌を眺めて頭を抱えているかと思えば、急にニヤニヤしたり、昨日なんて事務所の廊下で鼻歌歌いながらスキップしていた。ご機嫌か。

「まあ、理由はわかるけど…」
「なんか言ったか?」
「べっつに」
「ふーん」

一瞬私の方を向いたかと思えばすぐに手元の雑誌に目線を落とした。
今日の仕事は雑誌のインタビュー。どちらかといえば個人スタイルの多いシャイニング事務所の中でのユニット、それも男女ユニットということで私たちはそれなりに注目されているらしい。今回の特集内容は今注目のユニット。どうやら前の組のインタビューが押しているらしく私たちは別室で待機中。
私は手帳を開いてこの後のスケジュールを確認する。多少注目されているとはいえまだ私たちにマネージャーなんてついていない。スケジュール管理はある程度事務所がやってくれるけど自分たちでも確認しないといけない。仕事に穴をあけるようなことは絶対に許されない。とは言っても一日に入ってる仕事は2本あればいい方。ちなみに今日の仕事はこれだけで明日はオフということは手帳を見なくてもわかっている。
じゃあなんで手帳を開いているのかといえば、まあ、暇なんだよね。来栖は雑誌に夢中だし、つまらない。

「はぁ…」
「なんだよさっきから」
「…だから別にって言ってるじゃない」
「何拗ねてんだよ」
「拗ねてない!ただ早くインタビューの番来ないかなぁってだけ」
「ふーん」

納得してない様子だったけど私が手帳から視線を上げないで入れば興味が薄れたのか再び雑誌に視線を戻した。
別に拗ねてなんかいない。ただ、ただちょっと面白くないだけ。

「(明日、かぁ…)」

手帳に仕事の予定を書きこんでいるのとは別の色で書かれた文字を見て眉をひそめる。


"日向先生Birthday"


まあ、つまりはそういうことなんです。





いつもなら2人で歩く帰り道を1人で歩く。
インタビューが終わると来栖の期限は目に見えてよくなった。いそいそと帰り支度をし、スタッフさんから食事に誘われても今日は用があるんで!と笑顔で帰っていった。私はといえばその真逆。来栖の浮かれぶりから勘ぐったスタッフの「彼女とデートなんじゃないか」という疑惑を晴らそうとしたらなぜか食事に付き合うことになり、連絡先を教えてほしいとか、セクハラまがいなこと言われたりとか(さすがに女性スタッフさんが止めてくれた)とにかく散々だった。
明日絶対に来栖を殴る。みぞおちをグーで殴る。
そう固く心に誓ったけどすぐ明日はオフだから来栖とは会わないことに気がつき、ますますストレスが溜まっていった。
私の相棒であり、自称王子の来栖翔は日向龍也の大ファン。いや、ファンというより日向厨?
明日はその日向先生の誕生日なわけで、来栖の張り切り方といえばそれはもう凄まじいものだった。一か月前からリサーチを始め、ああでもないこうでもないとお前は女子か!と突っ込みたくなるような気合いの入れよう。普段はまあ、それなりにかっこいいのに、どうして日向先生のことになると暴走してしまうんだろう。春歌もHAYATOのことになると周りが見えなくなるし、似たもの同士?

「はぁ…」
「水瀬?」
「え、あ…日向先生。お疲れ様です」

大きくため息をつくと聞きなれた声に名前を呼ばれ驚いて声のした方を見ると車に乗った日向先生だった。

「こんな時間まで仕事か?」
「いえ、スタッフの方を食事をしていました」
「そうか。寮にもどるんだろ?もう暗くなるから乗ってけ」
「え、でも…」

まだ寮まで距離があるし最近この変で不審者が出るという話を聞いていたからその申し出はとてもありがたい。しかしさっきまで日向先生に対して直接の原因ではないにしてもイライラしていたから少し気まずい。

「なに遠慮してんだよ。ほらさっさと乗れ」

まだスキャンダル気にするほど有名ってわけでもないだろ。ニヤリと意地悪いことを言われてムッとする。

「そんなこと言って、日向龍也、後輩女性アイドルと熱愛!?とかフライデーに載っても知りませんからね!お世話になります!」

車の助手席に乗りバタンと勢いに任せて扉を閉めると日向先生は心底可笑しそうにククッと笑った。うまく乗せられてしまったことが悔しいし恥ずかしい。

「せ、先生はこんな時間に帰るなんて珍しいですね」

話を逸らしたくて目線を泳がせながら話題を変えた。すると日向先生はそうなんだよなぁと不思議そうな顔をする。

「珍しく社長は問題起こさねぇし、林檎は妙に気つかってくるし…。仕事がはかどって明日は一日オフになった」
「へぇ…。あ、きっと皆さんなりのお祝いなんですね」
「は?」
「へ?」

日向先生が驚いた顔をして私の方を向いた。って、先生!ちゃんと前見て運転してください!

「お祝いって何のだ?」
「何のって…日向先生明日誕生日じゃないですか」
「…ああ」

この反応はもしかして…

「自分の誕生日忘れてたんですか?」
「ああ、すっかり忘れてたぜ。この年になると誕生日祝ったりしねぇしな…」
「そんなもんですかね?」
「ま、お前も後10年すればわかるさ」

あんまりわかりたくないです先生…
そっと心の中でそう呟いた。
その後しばらく仕事のことについて話していたが、信号待ちになったときふと思い出したように日向先生は口を開いた。

「そういや今日来栖はどうした?たしか同じ仕事だったよな」
「知らないです」

反射的に返した声色は物凄く不機嫌なもので自分で驚いた。日向先生も面食らった顔をしている。

「あ、その…来栖ってばインタビュー終わったらすぐに帰っちゃったんで知らないです」

なんとか誤魔化そうとアハハと笑ってそう言えば日向先生は苦笑して私の頭をぐしゃぐしゃ撫で回した。ちょ、ちょっと痛いです先生。

「喧嘩したならさっさと仲直りしろよ」
「こ、子供扱いしないでください。それに喧嘩じゃないです」

ただ私が勝手に不機嫌になってるだけだ。

「ハイハイ」
「…適当に聞き流してませんか?」

ぶすっとそれこそ子供っぽく拗ねると今度は優しく頭をひと撫でしてアクセルを踏んだ。骨ばった手は当然だけど来栖よりがっしりしていて、ハンドルを握る姿も様になっていて物凄くかっこいい。ああ、来栖が憧れるのもわかるなぁと思う。かっこいいし、優しいし、なにより大人だ。

「先生」
「…ん?」
「明日は会えないと思うんで、今のうちに言っておきますね」





HAPPY BIRTHDAY Mr.Hyuga





次の日、日向先生がオフということを知らず結局プレゼントを渡せずじまいで落ち込む来栖をみて私の機嫌は元にもどった。


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