カギのかけられた部屋 | ナノ
PARADOX 1

新年明けてから始めての登校日。伊藤は、自習室に残って大切な友(多分それ以上)の青木と勉強をしていた。二人は今年、高校受験を控えている。

「うーん、苦手なんだよね。……こういうの」
青木が言う。でもたしか、彼はわりと歴史は得意だったはずで……。
「……ふふっ。仕方ない。この問題が僕にあってなかっただけだし、全く問題はないねー」
そうのんきに呟く彼を横目に僕は正解を指差した。
「問題にケチつけない。正解は3番だからね、なんでかわかる?」
そういいながら理由を教えようとすると、図々しい彼はさらにこう続けた。
「あのね、伊藤君。年号なんて知らなかったって人生生きていけるし、それにね……」
「うんじゃあ聞くけどさ、僕と同じトコ受けるって言って担任困らせてたのはどこの誰かさん「うん、あの時は僕の中のリトル青木がそういったんだ、衝動ってやつだね、王子様」
途中で僕の言葉を中断させたやる気のない【一番の問題児】青木はそのあとしばらくの間、満足げな笑顔を見せていた。
言葉では伝わらないと確信した僕が次の手を打とうとしたとき、彼が僕の目をじっと見つめながらこういった。
「もっと静かな所の方がはかどるし、伊藤君の家にでも僕を上がらせてない?」
「……?」
「だーかーらー、僕は王子様の家で勉強したいの。ね、よろしく!」
あ、いや、話が唐突すぎて……。
「あ、ちなみに、今日、僕は君の世話をたのまれていてね。……その、伊藤君のおばあちゃんが僕のこと、気に入ってくれたみたい」
そういって、黒いガラケーを取り出す青木。彼の不敵な笑みがこぼれてくるのをみて、伊藤は今ピンチなのだということをはっきりと確認した。
「ほらね!」
青木のその携帯画面に、僕は言葉を無くした。
《じいちゃんも旅行だし、私も旅行したくなってね。そしたら、いい人が隼人のそばにいたものだから……お願いしました》

つまり、

二人っきりになってるわけね、僕たち。

「さぁさ、いそいで片付けよっと♪」
隣からは勉強を諦めた青木が教科書を鞄に詰めこむ。
……、これは。

「でも、勉強にはまじめだからさ」
青木は愉しそうに笑っていた。

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