PARADOX 3
もう、青木君ったら。勝手にカップ洗っちゃって。変なところで律儀なんだから。
「勉強ってあれだよね?」
僕から誘おうかな。
「ん? 何の?」
こう言うのは予想済み。
「夕暮れだけど?」
「そうだねー。王子様の部屋にお泊まりしたいなぁ」
一捻りしないと乗ってくれないところも彼のイイポイントの1つで。
「じゃあ、ベッドまで、……連れてって? 青木君」
「ん?」
あーあ、こりゃ酷いな。うん。相手は無視を選択してきたようだ。
「じゃあ、先に戻るか」
「えっ、あ、まって」
青木君が僕の車椅子を握る。
「勝手に行かないでよね……出会ったときからずっと、僕は君の足だって約束したじゃん」
「ああ、確かにそんな話してたっけ? 青木君、それぐらいの記憶力があればテストも全部満点なのに」
「ねぇ、王子? どうしてほしい?」
ベッドに僕をおくと青木も横になった。
「どうされたいって聞くもの?」
「今日は僕、優しくできないかも。覚悟、してよね?」
瞬時に彼の口が僕の唇を割った。
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